第23話
ヘルシーの故郷である旧アルカイド領で再会したヘルシーとユリア嬢。
感涙に咽ぶふたりが落ち着くのを待って、ユリア嬢に話しを聞くことができた。
「ジバ様、わたしは亡くなったアルカイド男爵の姪にあたるものです。
早逝した父母の代わりに幼少のわたしを引き取り、育てて下さったフラム叔父様を父とも慕っておりました。
あの日、スタンピードが起こってしばらくした頃、突然ボロボロになった王国軍騎士団の方々が来られて、「急いで避難するように」と。
スタンピードの前線となっていた隣領が壊滅して、魔物が迫って来ていると伝えて下さいました。
大半の領民は避難を済ませておりましたが、未だ残っている領民達を率いて、わたし達はこの地を離れることになりました。
領主であるフラム様や領騎士団の皆様は最後まで残ってスタンピードを止めてみせると笑って居られたのが皆様との最期となってしまいました」
淡々と話すユリア嬢。だが、その目は4年近く前の光景を見ているように恐怖と後悔の念がが見え隠れしていた。
「そして、ジバ様がスタンピードの元凶であった古竜を斃して下さったおかげで、わたし達は再びこの地に戻ってくることが叶ったのです。
ですが、屋敷や街、畑など、何もかもが魔物達に蹂躙され、めちゃくちゃでした。
陛下をはじめとする王族の方々の支援が無ければ、たった3年間でここまで回復することはなかったでしょう。
まだ、領としての体は為せておりませんが、フラム様の意思を引き継ぎ、奥様を支えて、いつの日かこのアルカイド男爵領を必ずや復活させたいと思っております」
ユリア嬢の目には強い意志が感じられる。
彼女なら、カゴイモプロジェクトに真摯に取り組み、成果を出してくれるだろう。
そう思ったジバは、ユリア嬢の手を取り、彼女の純真な瞳を見つめて大きくうなずいたのだった。
「まさか、ヘルシーがユリア嬢と懇意だったとはな。
しかし、彼女のアルカイド領復活に向ける情熱は本当だ。この地であればカライモの改良と普及に対する施策を実践できるかもしれないな」
「はいジバ様。御用商人だった父に連れられてお屋敷に伺っている折に、親しくさせて頂いておりました。
今回のプロジェクトについても真摯に受け止めて頂き、『是非協力を』と言って頂けたことは、とても嬉しかったです」
あの後、ユリア嬢に導かれて、アルカイド男爵の奥方にも会った。
元々弱かった身体を酷使したせいで、床に臥せってはいたが、ユリア嬢に負けぬ情熱を持っていたことにホッとする。
そして、今回のプロジェクトに関する説明と、アルカイド領での活動内容、それに伴う支援内容について説明した。
熱心に耳を傾ける奥方とユリア嬢。
是非にと、プロジェクト参画への意欲を見せてもらい、後日改めて詳細を詰めることを約束して、帰路に着いたのだった。
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