第22話
「ジバ、話しはよく分かった。お前の案を検討してみよう。
上手くいけば王家の力も復活するし、困窮している貴族達にも報いてやることが出来るだろう。
それでだな、カゴイモプロジェクトが具体的に始動するまでは水面下での調整を頼む。
今すぐに国家プロジェクトとして動かしてしまうと、邪魔が入ってしまうのでな。
目途が立った時点で教えてくれ。国家プロジェクトとして一気に推し進めてしまおう」
監理部局を管轄するキャスバル兄さんも乗り気になってくれた。
カミラも総務部内で信頼のおけるメンバーを選出し、調整に入ってくれているようだ。
新たな国有地での利権が絡めば、3大商会も乗り気になるだろうし、参画を願い出る商会も増えるはずだ。
上手くいけば、反抗的な有力貴族から商会を取り上げることが出来るかもしれない。
法的な整備や規制についてはキャスバル兄さんにお願いするとして、俺達は他の2点について注力することにする。
カライモの品種改良と、普及施策だ。
「この辺りだな、お前の故郷は」
「はい、そうです。既に村は無くなってしまっていますが」
ヘルシーの故郷は、あのスタンピードが通った線上にあった。
その後、親と共に疎開した場所が今の実家になる。
そして、俺達は彼女の失われた故郷へとやって来たのだ。
ここを治めていたのはアルカイド男爵。実直で猛勇な男だったと聞いている。
彼はこの地でスタンピードを食い止めようと最前線で奮戦し、そして亡くなった。
王家としては何とか彼の亡き跡を保護して、子供に継がせたかったが、残念ながら子供は居らず、後継ぎに出来るような者はことごとく男爵と共に散ってしまったのだった。
たまたまヘルシーの故郷がこの辺りだと聞いて、俺は彼女を伴ってこの地にやって来たのだった。
「ここがアルカイド男爵の屋敷か」
スタンピード収束後、疎開先から戻ってきた男爵の縁者達の一部が、ここに住んで、行くあてのない者達を集めると、細々とした集落を作っていた。
聞き付けたキャスバル兄さんからの援助を受けて何とか食いつないでいる有様ではあるらしいのだが。
以前のアルカイド領を見下ろす位置にあったアルカイド男爵の屋敷跡には、簡易ながらも屋敷が、建てられており、その集落の拠点となっているはずだった。
僅かに残った旧屋敷の外壁は修復されてはいるが、外敵の侵入を防ぐには甚だ心許ない。
だが、安普請ではあるが、良く手入れされ清潔感漂う雰囲気は、主従の確かな信頼関係を物語っているようだ。
「はい、どちら様でございましょうか?」
ジバとヘルシーが男爵邸の扉を叩くと、中から20歳そこそこの女性が、少しだけ開けた隙間から応対してきた。
「ジバと言う。こちらはヘルシオーネ。元この村の住人だ。」
「ヘルシオーネ…さ…ん?
あの、ヘルシオーネさんですか?!」
扉が大きく開き、女性が飛び出して来る。
「ヘルシー!無事だったのね!良かった!良かったよーー、ううぅ」
「ユリア様?ユリア様!お懐かしゅうございます。
よくぞご無事で…本当に、本当に…良かった…… うううぅ」
女性はヘルシーに抱きつくとそのまま、おいおいと泣き出した。
ヘルシーも同じように泣いていた。
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