第21話

3大商会との会談の日がやって来た。


会議場所となる商業ギルドの大会議室は、朝から物々しい雰囲気を醸し出している。


扉を開けて中に入ると、今回の参加者は既に全員着席していた。


「ジバ様、お待ち致しておりました」


商業ギルド長が立ち上がり、仰々しく俺を迎え入れると、他の者達も起立して一斉に頭を下げる。


「アルファード商会の会頭をしております、べラストと申します。

英雄ジバ様にお会いでき、光栄に存じます」


「ベータルンダ商会の会頭をしております、ファルンダです。この度は国を救うための新しい構想に参画させて頂けると聞いております。


よろしくお願い致します」


「サーデンストラ商会のストラウスどす。ジバ様のお名前は我が祖国キョウルス共和国でもよう聞かせてもらっとおりますわ。よろしゅうおたのもうします」


「総務局のカミラです。事務方としてヘルシオーネ様に協力させて頂いております」


「今回のプロジェクトを統括しております、ヘルシオーネと申します。

本日は多忙の中、参集頂き有難うございます。


今回の『カライモ主食化』プロジェクトはジバ様のお考えになられるこの国の強化策のひとつとなります。


是非皆様のご協力を仰ぎつつ、最善の施策を持ってジバ様の遠大なお考えに沿えるようにしていきたいと考えておりますので、是非ともご協力をお願い致します」


そう言ってヘルシーが俺に向かって深々と礼をすると、他の者達もそれに倣って頭を下げる。


「うむ、皆、このプロジェクトは、未だ疲弊冷めやらぬ、この国を以前のような豊かな国に戻すための重要な国家事業だと捉えて欲しい。


皆はこの国の物流を取り仕切る大物だと聞いている。是非力を貸して欲しい」


「「「ははーーーっ」」」


こうして、3大商会との駆け引きが始まった。






「仰ることは分かりますが、我らも商人の端くれ、利が無いと付いて来てくれる者も限られてきますので...」


「限られるということは、利が少なくても協力してくれる商会があるということか?」


「はい、いくつかはあるかと思いますが、このような大プロジェクトを推進するほどの力は得られぬかと」


「ジバ様、利が薄くても動かはるいうことは、他の目的があるということちゃいますか。


それやったら、その者らを使ってもジバ様の思い通りに進まん可能性もありますなあ」


「ストラウスさんが仰っているのは、有力貴族と結び付いている商人のことですかな?」


「ギルド長殿、そこはご想像にお任せしますわ」


なるほど有力貴族に囲われている商会であれば利を考えず我らの計画には入ってくるが、最終的にはその貴族の利があるように動くということか。


貴族の政争のネタに使われるのも癪だ。その辺りも考える必要があるか。


「逆を考えれば、有力貴族を先に取り込めば、商人は付いてくるということでしょうか?」


「ヘルシオーネ様、それが出来れば一番早いのですが...なかなか難しいかと」


カミラが言うこともよく分かる。


未だ国全体が疲弊している中、王家の力もかなり削がれているといって良いだろう。


もちろんスタンピードにより領土を荒らされてしまった領地はその比ではないが、逆にその影響を受けなかった地域の大貴族は、宮廷内でも大きな力を持つようになってしまった。


その者達を登用するとなれば、今以上の発言力を持たせることになり、王国にとって危険だと言いたいのだな。



結局これ以上は案がまとまらず、第1回の会合は顔合わせと大きな問題を提起したまま終了した。







「領地の整理を行い、カライモの生産地を王家直轄にしてしまうか」


「「「?????」」」


「ジバ様、それはいったいどういうことでしょうか?」


「そんなことが可能なのでしょうか?」


3大商会を交えての第1回会合の3日後、ヘルシーとカミロ、商業ギルド長の3人と再度打合せを行っている。


俺の領地整理案について3人が驚いている。


それはそうだろう、王家の力が弱まっている中、そんな大胆なことをすれば内乱を起こしかねないのだから。


「ここだけの話しにして欲しい。

実はいくつかの貴族から領地の返還願いが出ているのだ。


前回のスタンピードで被害を受けた領地の中で、後継ぎがいないまま戦いで主を失い、領地経営がままならない領地がいくつもある。


今の状態で全てを王家に返還させるのを好ましく思わぬものもいてな。

なかなか思い通りに進んでいないのだ。


それで考えたのだが、あの辺り一帯の領地を再開発エリアとして一旦王家で預り、再分配するのはどうだろうか?


そしてその際に返還を希望する者は、新しく区分けしたエリアの代官とすることで貴族として存続させようかと考えたのだ。


再開発するためには理由が必要だが、今回のプロジェクトを利用しようかと思ったのだが」


カミラが難しい顔をして思案している。


「ジバ様、そのお考えは兄王子様には既に?」


「ああ、今回のプロジェクトには絡めていないが、内々に話しはしているな」


「ならば、総務局としても内々に話しを具現化してみます」


「カミラ、頼んだぞ。キャスバル兄さんには俺の方からも話しておく」




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