第20話

ヘルシー率いるカゴイモ普及推進室が進める三本の矢。


カゴイモの専売制、品種改良、そして第2の主食としての普及。


ヘルシーは新設された各部署と調整を進めてくれている。


専売制についてはそれらを管轄する総務局や、商業ギルドとこまめに調整しながら、法の網の目に抜けがないように目を配っているようだ。


やはり、最大の問題点は他国からの輸入である。


特に他国にも支店がある商会では、いくら関税を掛けたところで、いくらでも抜け道がある。


また、商会の持ち物である閉ざされた畑で闇栽培を行われる恐れもあった。








「うー--ん、調べれば調べるほど抜け道があるわね。


規制や罰則で専売制を徹底しようと思ったんだけど、根本的な考え方から考え直さなきゃならないかしら?」


「そうですね、たしかに規制だけじゃ難しいかもしれないです。


何か商人にもメリットがあって、闇取引なんてしなくても良いようになればと思うんですが」


「そうね、商業ギルドに何かアイデアは無いかしら」


「そうですなあ、他国に支店があるような商会は既に様々な特権をもっておりますのでな、なかなか良い案は見つかりませんな。


それにこれ以上特権を渡してしまうと、中小の商会からクレームがでますしなあ」


商業ギルド長が「本当にこまりましたなあ」と困り顔だ。


商業ギルドとしても、この度のカライモの主食化については諸手を上げて賛成してくれている。


未だ不足気味の小麦や米だけでなく、新しい大型商材の登場は、それだけ中小の商会が安定して稼げる数少ない機会なのだ。


更にそれが国の専売品となれば、大手商会と対等に売れる商材なのだから、ギルド長の本音としては、中小商会のみに販売許可が出るのが最も望ましい形なのだ。


もちろん、そんなことをすれば、大手商会から激しい反発があるし、彼が口にでもすれば、ギルド自体が大騒ぎになってしまうだろう。


国から強制してくれるのがありがたいが…


「中小だけの販売に限定しようかしら」


ヘルシーの一言に、ギルド長は前のめりになる。


「いや、そんなことをしても、大半の中小商会は大手の傘下にありますから、大手が何らかの手を打つに決まってますよ」


総務局から派遣されている職員が諦め顔で吐き出してから、すぐに口を噤む。


壁に目あり障子に耳あり。


全く、何処から漏れるか分かったもんじゃない。







結局専売制については、一旦棚上げになったみたいだな。


報告するヘルシーの口も様々な思惑を内包しているのが見てとれる。


「他国にも支店がある大手商会を懐柔できないと難しそうだな」


「そうですね。しかし、さすがはジバ様。懐柔という表現が最も的を得ているかもしれません。


懐柔ですか...」


「ああ、この国に入り込んでいる大手商会は3つ。アルファード商会とベータルンダ商会、そしてサーデンストラ商会だ。


前のスタンビートでこの国が苦しんでいる時に積極的に国を支え、資金と食糧を供出してくれた。


その貢献により、王より様々な特権を与えられたと聞く。また、その際に中小の商会を派閥として纏め上げたのだ」


「なるほど、そうだったのですね。総務局の職員がなぜあんな顔をしたのか分かるような気がします」


「そうだな、よし俺が3大商会と会ってみよう。まだ彼等が障害になるとは限らないし、逆に最初から取り込んでおくのも一手だろう」


明らかにヘルシーの顔色が明るくなった。


「有難うございます。3大商会の会頭と商業ギルド長を招集しておきます」


さあ、どんな搦め手を使うかな。


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