第19話
需要と供給のバランスを考える。
品種改良により、他者に真似されても絶対的優位に立てるだけの付加価値を付ける。
調理法のバリエーションを増やし、主食のひとつとして根付かせる。
俺とヘルシーが考えたカゴイモを普及させるための方策だ。
1つ目の需要と供給については、米同様、生産から販売まで国の統制下におくことにした。
平たく言うと専売制だ。これは需給バランスを考えるだけでなく、価格を絶えず一定水準に保つことを目的とする。
各農村で栽培されたカゴイモを一定価格で全数買い取り、国が独占的に売る形になるため、農村の経済状況は安定していくだろう。
2つ目の品種改良については、これは国の専門機関として研究所を設置することにした。
元々カゴイモは痩せた土地でも育つ食物として寒村の民達の暮らしを支えている。
ということは、既にある一定量は収穫されているわけで、専売制で価格が安定すると、闇生産・販売する者達が必ず現れる。
それにより、市場の混乱が発生せぬよう、品質改良を重ねることで、より安全で美味いカゴイモを作る必要がある。
要は、高品質な商品を安定価格で提供し続けられれば、安いだけの粗悪品など売れるはずが無いのだ。
3つ目の調理法のバリエーションを増やす だが、実はこれが一番重要かもしれない。
いくら安定して供給され、価格も訴求し易くとも、焼くか蒸かすしか調理方法が無ければ、人々は飽きてしまう。
そうなると、商人達は第2、第3のカゴイモを探し出して、需要もそちらに流れてしまうだろう。
そこで、カゴイモ普及推進室に3つのセクションを作ることにした。
1つ目は、法整備と専売制の準備、それと違法生産者、違法販売業者の取り締まり。
2つ目は、品種改良を行う研究部門と各委託生産先への農業指導。
3つ目は、主食として普及させるための広報活動と調理方法の研究開発。
総責任者は俺で、実質的な運営責任者はヘルシーに任せることにした。
少し荷が重いような気がするが、彼女のやる気に期待しよう。
どうせ、この話しを聞きつけてスミセスが噛んでくるだろうしな。
1つ目のセクションについては現法務大臣の子息を当てた。
少し前に陛下より発令が出され、貴族子弟による職務継承は禁止されたが、まだまだ、実力主義に完全移行するには時間が必要だ。
ならば、子息にそれなりの仕事を与えて、上手くこなせれば実力有りと認めてやる。
それくらいの経過措置は必要だろう。
上手くこなせなければそれまでで、そういった事例が多くなれば、必然的に実力主義に変わっていくのだから。
幸いにも法務大臣の子息は頭が良いようで、俺達のやろうとしていることをよく理解している。
2つ目のセクションにはカゴイモの生産地から集めた若者と魔法師団から木系統の魔術師を入れる。
これまでの栽培ノウハウを生かしつつ、魔術による促成があれば、研究も進むだろう。
更に、自らの村に合った形での栽培方法を研究させることで、より生産性と品質向上を見込めるに違いない。
3つ目のセクションには、王城の料理番と新規に徴用した主婦達を入れた。
主婦目線でコストパフォーマンスを考えた料理を増やす意味もある。
様々な家族構成に合った形のレパートリーが出来ればより普及が促進されるだろうし、それが家庭の味として定着してくれれば、息の長い食材となるだろう。
それに、主婦の情報伝達網の早さもバカにできない。
彼女達の口コミは城から発せられる通達よりもより早く、より広く伝わるのだから。
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