第9話
戦場に戻ったジバを待っていたのは、前線を支える兵士達であった。
バジルより一個中隊を任されたジバは、巧みな用兵を用いて次々と現れる魔物の軍勢を撃破していく。
魔物の中には知能を持ったものも多く、互いの戦術をぶつけ合うことも度々あった。
ジバ中隊は呂布や関羽、司馬懿の時の経験を余すことなく活かしながら、快進撃を続けた。
向かうところ敵なしのジバ中隊は最前線まで進軍を続けた。
魔域のすぐ近くまで近づくと、そこには兵士と魔物の死体が死屍累々と横たわっており、戦闘の激しさを物語っている。
この状況を打開するためには、今回魔域を拡大させた元凶である古竜を斃す必要があった。
なぜだか分からないが、無限とも感じられる魔物の発生と古竜の出現。
ジバには偶然とは思えなかった。
ただ古竜が魔物の発生速度を高めているのは、これまでの調査で分かっていたのだ。
ジバは古竜を斃すべく、数人の精鋭を引き連れて、魔域の奥深く進むことになる。
進めば進むほどに魔物の凶暴性は増し、それぞれの体躯は巨大になっていく。
方天画戟は血を吸うほどに、その輝きを増し魔域の中ほどに辿り着く頃には光り輝く聖剣のように見えたと後の記録に残っている。
ひとり倒れふたり倒れと、やがて古竜の姿を確認する頃には、まともに戦える者はジバひとりになっていた。
古竜は大きかった。
呂布の身体ほどもあるジバではあったが、古竜から見れば、小動物ほどにしか見えなかっただろう。
方天画戟を振り回し、青龍偃月刀を突き刺す。
何千年もの間生きてきた古竜の鱗は硬く、傷を入れるのがやっとではあったが、こちらも乱戦の中、一騎当千と言われた呂布と関羽の武勇を誇る。
尻尾からの攻撃もブレスによる炎も、一度に何百という敵と対峙してきたジバにとって避けることは容易かったのだ。
一匹とひとりの戦は長期戦の様相を呈して来た。
これまで一瞬で敵を斃してきた古竜にとって、これほどの長時間に及ぶ戦いは初めてであったのだろう。
5時間にも及ぶ勝敗は、体力の切れた古竜の隙をついたジバの勝利に終わる。
一点を集中して攻撃した結果、古竜の硬い鱗と言えども、僅かにひび割れが現れたのだ。
そして古竜の体力が切れると同時に僅かな間隙を縫ってジバが突き刺した青龍偃月刀により、絶命したのだった。
古竜との勝負において精根尽き果てたジバは、そのまま倒れ込む。
濃厚な魔力により拡がる紫色の空を見上げながら、ジバは眠りについたのだ。
ジバが古竜を退治したことで、魔物の出現は大幅な減少をみせる。
そしてジバ達の安否を確認に来た調査隊は古竜の亡骸を発見した。
だが、そこにいるはずのジバの姿を見つけることは、ついに叶わなかったのであった。
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