中華天界物語

第4話 四神

【天界・四神殿（ししんでん）】

玄武（げんぶ）「暇だな」

青龍（せいりゅう）「暇だねー」

白虎（びゃっこ）「玄武！　龍（りゅう）！　見てよこれ！」

玄武「うっわ、気持ち悪いもん持ってきたな、シロ。なんだそれ？　眼か？」

白虎「よくわかんないけど、倉庫の中にあったのよ！」

朱雀（すざく）「……戻ってきなさい、白虎」

青龍「朱雀？」

朱雀「捕獲してください。白虎、それを私に渡しなさい。今すぐです」

青龍「危ないもの？」

朱雀「……そうですね、危険です。倉庫を整理していたら、五佐（ごさ）様が封印なされた妖怪の部位が出てきたのですよ」

玄武「は！？　それ割ったら、封印解かれる奴だろ！？」

白虎「あれ？　そうだっけ？」

朱雀「そうですよ」

青龍・玄武「そうだよ！」

朱雀「見たところ、それは一目五先生（いちもくごせんせい）の眼ですね。それが割れたら封印が解かれて、天界に復讐しに来る、なんて事があるかもしれません」

【一目五先生とは、五人一組で行動し、五人のうち一人のみ一つの目を持っており、善人でも悪人でもない人間を死に至らせる疫鬼（えきき）である】

白虎「ふーん、この目ん玉がねー……」

ツルッ

白虎「あ」

三人「うわあああああ！？」

ズサーッ、パシッ

玄武「……っぶねー、ギリギリセーフ」

青龍「ナイス、クロ」

朱雀「この馬鹿、いい加減になさい。貴方はどうしてそう不注意なのですか。そもそも、それは見せびらかすようなものではありません。ここにあるということは、私たちが信頼されて保管を任されているからであって、遊ぶためではありません。《しばらく正座していなさい》、いいですね」

白虎「……うぇえええ、はーいいいい」

玄武「出たよ、紅（コウ）の言霊縛り」

青龍「朱雀は天界一の言霊使いだからね」

玄武「しっかし、まあ、ほんと、心臓止まりそうだった……。俺がキャッチしなきゃやばかったんだからな、シロ！！」

白虎「……ううっ、ごめんなしゃーい……」

青龍「まあ、体力だけは有り余ってるもんね、クロは」

玄武「うるせぇよ！　貶してんのかコラ！」

青龍「勿論、僕の親友を最上級に褒めてるよ」

玄武「アオ。思ってもないこと言うな、ムカつく」

青龍「あれ？『親友』は本当なのに」

玄武「褒めてるは嘘じゃねぇかよ！　この野郎！」

青龍「《草針（ツァオチェン）》」

グサッ、ブシューーッ

玄武「いってえええええええ！！！　木が、木が俺の手に刺さったあああああ！！　アオ、この野郎おおおおお！！」

青龍「クロの鉄拳に対する正当防衛」

玄武「ドヤ顔すんな！　どこが正当防衛だ！　明らかに攻撃じゃねぇか！　あー、もう、血止まんねー」

朱雀「玄（げん）、傷を見せて下さい」

玄武「いい、大丈夫。そのうち血も止まるって」

朱雀「いいから、見せて下さい」

玄武「……ほらよ」

朱雀「《痛いの痛いの飛んでいけ》」

キラキラキラッ

玄武「ありがとよ、治してくれて」

朱雀「構いません。青龍、いくらなんでもやりすぎですよ」

青龍「だって、鍛えてガタイのいいクロとひょろっとした僕だよ？　僕、殴られたら死んじゃう」

朱雀「術を使うのはいいですが、限度があるでしょう。少しは反省して下さい」

青龍「分かった。君の恋人を傷付けて悪かった」

朱雀「次また過激なことをするようなら、容赦なく殺す気でいきますので」

青龍「こっわ」

玄武「紅。可愛い顔が台無しだから、怒るな」

朱雀「はい」

青龍「…………白（びゃく）、慰めて……」

むぎゅー

白虎「ひょわああああ！　急に抱きついてこないでー、このばかぁ！」

青龍「恋人の僕を慰めてくれないって、僕、悲しい……痛い痛い痛い。叩かないでー」

白虎「人前で、抱きつくなって言ってるでしょ！　恥ずかしいから離れてー！！　今、あたし動けないんだから！！　嫌ぁああ！！」

青龍「つれないなー、僕の可愛い白は……痛い痛いぃい、電気流さないでー」

白虎「あんた、木を司ってんだから効かないでしょうが！」

朱雀「……玄」

玄武「ん？」

朱雀「はい」

玄武「……っ、その手を伸ばしたポーズは？」

朱雀「抱き締めてください、のポーズです」

玄武「……っ！？」（ほんとにこいつは……っ！）

朱雀「嫌、なら仕方がありませんが……、っ！」

ぎゅっ

玄武「……嫌じゃねぇよ。照れ臭かっただけ」

青龍「あれが理想なんだけど、白はどう思う？」

白虎「龍のそういうとこ嫌い。…………まあ、うん、自然にできるように、なりたい……です」

青龍「んー、可愛い。口付けたくなるくらい可愛い。していい？」

白虎「絶対やめろ」

【北の玄武、東の白虎、西の青龍、南の朱雀。四神は南北、東西と司るものが対局でありながら相棒かつ恋人の関係】