パリ

ロンドンからパリへ引っ越した。

セーヌ川のほとり。

家は公園のすぐ横にあったように思う。

だから公園でいつも遊んでいた。

花もいっぱい咲いていたのを覚えている。


パリで幼稚園に入った。

イレーヌちゃんと仲良くなった。

いっしょによく遊びに行く。


セーヌ川のほとりを散歩したり。

セーヌ川の遊覧船に乗ったり。

遊覧船の上から、パリの街を2人で眺めている。


エッフェル塔のよく見える丘に行って、おもちゃの飛行機を飛ばして遊んでいる。


いっしょに美術館に行く。

オルセー美術館の、「ヴィーナス誕生」の絵を2人で観に行ってる。

カバネルさんと、ブーグローさん。2人の画家の描いた「ヴィーナス誕生」の絵。


「イレーヌちゃんに、めっちゃ似てる~」

って、いつもボクは、絵のヴィーナスを観て、言ってる。

「え~、いつ見たの~?えっち...」

ってイレーヌちゃんは紅くなってる。

「想像だよ~。イレーヌちゃんは、このヴィーナスみたいになりそう...」

「きゃあ~。でも、あやめっちも、このヴィーナスみたいになりそう...」


学芸員のお姉さんとも仲良くなったので

「このヴィーナスのモデルは、お姉さんですか?」

って聞いてみた。

「ちがいますよ~」

ってお姉さんに言われた。


「知ってるよ~」

ってボクは思った。


「ギリシャ神話のヴィーナスの誕生をモチーフにしてるのよ」

「甘いお菓子みたいで美味しそうですね」

「あらっ、小説家のエミール・ゾラさんは、このヴィーナスを、白とピンクの練り菓子で出来ているって表現してますよ~」


「やっぱり。なんか、めっちゃ美味しそう」

「ホラ貝を吹きながら空を飛んでるクピードーは、イレーヌちゃんとあやめっち2人に似て可愛いですよね」

「じゃ、やっぱりヴィーナスはお姉さんですね」

「あははは、メルシーボークー」

「なんでホラ貝を吹いてるんですか?」

「ヴィーナスの誕生を祝福してるんですね。イレーヌちゃんとあやめっちみたいに、青や白のちっちゃな可愛い翼を生やしたクピードーたち」

「ボクたち、翼なんて生やしてないですよ...あっ、イレーヌちゃんはピンクの翼、生えてるかも」

「あやめっちにも、ピンクの翼、生えてるみたいだよ~」

「ほら~、やっぱり。2人とも翼の生えたクピードーなんだね~」

「じゃあ、やっぱり、お姉さんはヴィーナスなんですね」

「あははは」


「この絵はいつ頃、描かれたんですか?」

「1863年だから、日本では幕末ですね。もうすぐ明治維新の頃ですね」

「印象派のはじまる頃ですか?」

「そうですね。よく知ってますね。印象派の始まりは日本の明治維新の頃ですね」

「なるほど~」

「ヴィーナス誕生の絵は印象派の始まりと同時期なので、オルセー美術館に印象派の絵といっしょに展示されてるのよ」

「イレーヌちゃんも、印象派の絵のモデルのイレーヌちゃんから、名前、付いてるんだよ~」

「あら、まあ。そういえば、どことなくイレーヌちゃんの絵に似てますね。イレーヌちゃん」

「メルシーボークー」


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