第4話

 公園で遊んでいる子供たちの声が聞こえる。

 私も楽しくブランコに乗りたいから、順番を待っている。


 子供の胸くらいの高さの鉄の柵。


 ブランコの周りを囲んでいる鉄の柵は、ブランコに乗れるようにブランコの横の部分だけ途切れて、中に入れるようになっている。


 その部分で、私はずーーーっと待っている。


 ずーーーっと、あの子がブランコに乗っている。 二台しかないブランコに友達同士で乗って、楽しそうにおしゃべりしている。


 たまにブランコを降りたかと思うと、その子の友達が現れてブランコに乗ってしまうんだ。


 だからずっとブランコはあかない。


 なかなか順番が回ってこなくて、日も落ちてくる。

 冬の日暮れは早い。


 日が落ちる前には家に帰らないといけないのに。

 少しだけでいいから、ブランコに乗りたかったな……。


 せっかく順番を待っていたのに……。


 その時、眼鏡をかけた男の子が通りかかった。

 私の悲しそうな顔を見ると、状況を察してくれたのか、ブランコに乗っている男の子たちに注意してくれた。


 ブランコを占領するんじゃないって。


 順番待ちしている子が見えないのかって。


 強い口調だけど、真面目に感じる声で。

 とても優しくて、とても勇気のある声で。


 ブランコに乗っていた子たちは、文句を言いながらも降りて、順番を譲ってくれた。

 注意してくれた眼鏡の男の子がこっちを見て、微笑んでくれる。



 日はまだ落ちる前。

 まだ遊ぶ時間はあった。



 その子と一緒にブランコに乗って。

 オレンジ色の夕日に向かって笑いながら、ブランコを漕いでいた。

 暖かい気持ちに満たされて。

 冬の涼しい風が頬を撫でていく。


 ブランコの隣の男の子を見ると、とても楽しそうに笑ってこっちを見ていてくれる。


 日が落ちようとしていて、段々と暗い色が濃くなっていく。


 そして、段々と辺りが見えないくらい暗くなっていって。

 助けてくれた男の子の顔も段々と見えなくなってきた。

 もう帰らなきゃいけない。


 家に帰らないと、お父さんが怒ってしまう。

 帰らなきゃ。


 辺りは暗くなった。


 冬の街の中。

 子供用のキュンが燃え尽きたようだった。


 冬の風は冷たくて、暗い街の中。

 私には何の希望も見出せないイルミネーションの明かりだけが、街を明るく包んでいた。

 リア充だけが楽しめる街の中で、私はキュンを売っていた。

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