第188話 やっぱり生徒会。
「多口会長、この書類の確認お願いします」
「おーう」
「ダメだ本部! 会長は今私の湯たんぽなんだから無理。あっちいけ」
「いや仕事ですし」
冬休みの間にロリ……多口会長に会えなかったらしい早乙女先輩は会長を自身の膝の上に乗せて後ろから抱き着き、会長を堪能している。
いや仕事しろよ……
「まあまあ本部くん。愛ちゃんのそれは病気みたいなもんやし、許したってぇな。りんちゃん成分を補給せな動かへんねん」
「必須栄養素みたいな感じで言ってますけども」
「本部くん、無駄なんだよ。ここにまともな人は私しかいないから」
「いや、本庄先輩もまともな人ではないですから」
「せやね。まともなのは私しかおらんし」
「どの口が言ってるんですか仲道先輩……」
学園祭の時はわりと真面目に仕事をしていた面々ではあるのでやる時はしっかりやるのだが、普段はとことんだらけている。
未だに冬休み気分が抜けていないのだろう。
「おうお前ら〜。差し入れだー」
「吉村先生、冬休みになってもチョコミントアイスですか……凍えて死にそうなんですが」
「バカを言うな本部。空調の効いた部屋でぬくぬくとしながらアイスを食べるのが贅沢なんだよ。わざわざ生徒会室に来てまで食べるのにも意味があるんだよ」
「仕事サボりたいだけでは……」
「ああそうだ。だから口止め料としてのチョコミントアイスなわけだな」
そう言って笑いながら「あー寒い寒い」と呟きつつ生徒会室に入ってくる吉村先生。
吉村先生もそうだが、基本的に生徒会のメンバーは
吉村先生に対しての印象も、生徒会に入る前に見かけたことくらいはあるのだろうけど、こんなにサバサバした人だとは思っていなかった。
多口会長は変わらない感じだけど、仲道先輩は生徒会以外では基本的に標準語だし、本庄先輩は清楚な感じだった。
普段の先輩たちを知っているわけではないし、学園祭などの交流で思った感想でしかないけど、この人たちは本当によくわからない。
「本部〜あったかいお茶飲みた〜い」
「……わかりましたよ。他に飲みたい人は?」
「私も〜」
「私冷たいのがいい」
「会長の唾液」
「うちも貰おうかな」
1人頭のおかしい注文してるがそれは無視して勝手に温かいお茶に変更する。
本庄先輩だけは冷たい派なので僕と同じである。
「あー……サボって食うチョコミントアイス美味ぁ」
「吉村先生って実はサボるために生徒会顧問やってますよね?」
「当たり前だろ!」
「私はせんせーがアイス持ってきてくれるから黙認してる。会長権限」
「多口会長、アイスに釣られて黙認しちゃダメだと思うんですが」
「なによ本部? 会長に楯突く気?」
「いやただのツッコミじゃないですか」
「つ、ツッコミなんて破廉恥だよ本部くんっ!」
「本庄先輩は頭でも打ちましたか?」
「せやで愛ちゃん。本部くんはこの生徒会の唯一まともなツッコミ担当なんやから」
「みんなでボケに走るのやめてくださいよ……」
生徒会に所属してるのに、書類仕事よりツッコミ担当としての忙しさの方が勝るって意味わからん……
休憩がてらアイス食べてるはずなのに、仕事中よりカロリー消費している気がする。
「せんせー、今年のバレンタインも期待してる〜」
「任せとけっ」
「何の話ですか?」
「去年自作チョコミントを作って生徒会のみんなに渡したんだよ」
「吉村先生、お菓子作りとかできるんですね」
「先生が作れるのはチョコミントだけだけどね」
「チョコミント極振りか」
近年では女性同士でバレンタインの楽しむ文化もあるしそれはそれでいいのだろうけども、吉村先生ってほんとなんで先生してるんだと思わなくはない。
「本部〜チョコ期待してる〜」
「なんで僕がバレンタインで会長にチョコ渡す話が勝手に進んでるんですか……どんだけ甘いもの好きなんですか」
「ほなうちも期待してるわ」
「乗っからないで下さいよ」
「会長の体液入チョコなら貰ってもいい」
「色々アウトでしょそれ」
「本部くん、私も欲しいな?」
「ウキウキしながらねだるのやめてくださいよ本庄先輩」
恐ろしいな日本のバレンタイン……
チョコレート会社の策略が男女逆転してもなお成立するとは。
「……フォンダンショコラなら作れますから、覚えてたら作ってきますよ」
「今の録音したからね本部くん」
「本庄先輩こわい」
黒須さんに通ずる怖さを感じたぞ本庄先輩……
「な、なんか女として本部に負けた気がする……」
「吉村先生、項垂れた後頭部晒さないで下さい」
ほんとなんなんだこの生徒会……
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