第189話 幼馴染の詮索。
学年末テストも近くなってきた2月。
クラスの男子たちのそわそわ具合は痛々しいほどに伝わってきていた。
僕は天使さんがいるので何事もなくテスト勉強に勤しんでいたのだが、毎日多口会長から「ふぅぉんだんんん……しよころらぁぁぁ……」と怨念じみた連続メッセに頭を悩ませていた。
いやどんだけ食べたいんだよ……
多口会長、食い意地張りすぎなんだよな。
いやまあ僕が「覚えてたら作る」と言ってしまったので僕も悪いのだが……
「桃原さん、一緒に帰りませんか?」
「ごめんね本部くん。予定があって」
「そうですか。それでは仕方ないですね」
申し訳なさそうにしながら女の子みたいに細い手を胸の近くで合わせて謝罪する桃原。
可愛いので問題はない。
できればフォンダンショコラを材料とか買いに行きたかったが、まあ1人でも問題はないか。
前にも作ったことあるわけだし。
「……より寒くなる2月はやっぱり堪えるな……」
沖縄の2月でも最低気温は寒くても5度とかなのに、雪降ったりするような地域で僕はよくもまあ凍死しないもんだ。
「たーけー。雪合戦やろうぜっ!」
「お前は小学生男子か百合夏。てかなんで僕と同じ方向なんだよ」
「日々本部家に入り浸っている私が帰る方向が同じくらいいいじゃんいいじゃん〜」
「よくない。だいたいなんで夏生まれの百合夏はそんなに元気なんだよ……ほんとに沖縄人か?」
「遺伝子レベルで
「さいですか」
そういえば
人間じゃないのかもしれない。
幼馴染であるが、その疑いを払拭できない。
直人さんも人間じゃないし、僕の周りは賑やかだな。
「じゃあ僕は買い物するからじゃなあ」
「たけるんママ〜
「誰がオカンだ。せめてパパにしてくれ」
「それはちょっと……」
「よし、お前帰れ」
「ヒマだから一緒に行く〜」
「暇じゃないだろ勉強しろよ。成績悪いんだし」
「たけるんママが
あっけらかんと笑う百合夏に今更腹を立てることもない。
この会話すら僕らからすれば軽いジャブであり挨拶みたいなものである。
幼馴染とは恐ろしい。
「で、どうなったのよ?」
「……なにが?」
「ふふん。こちとらもうわかってんだ。さっさと白状した方が身のためだせ? 兄ちゃん?」
「いつの時代の刑事だよそれ」
「いっひっひ。このゲス顔が刑事に見えますかい旦那ぁ?」
「どっからそんなの覚えてきたんだよ。英単語とか覚えてる方が
「つれないなぁ」
百合夏の聞きたいことはわかってる。
こいつは昔からそういうのに目ざとい。
クラスでの恋愛事情を嗅ぎ付けるのが上手いのだ。
それ故に変態である。
「で? 結局チョコ貰う予定はあるの?」
「真乃香さんからは毎年だからな」
「そういうんじゃないよ」
「むしろお前こそ、あげる予定とかあるのか?あと半年で沖縄に戻るんだろ?」
詮索されるのが嫌なのでカウンターとして百合夏の恋愛話を掘り下げる。
百合夏の事だからもう知ってはいるのだろうけど、認めると面倒なので自白しないに限る。
「あげる予定はないかな。角立つと嫌だし」
「そうか」
「実は学園祭後に告白されたけど断ったし。2人」
「ちょっと待てその話は聞いてないぞ?」
「言ってないし〜言わないし〜」
しれっと学園祭エンジョイ勢だなこいつ。
満喫し過ぎだろ。羨ましい限りだなおい。
「女の子からだったらおっけーしたんだけどねぇ」
「そこの線引きはしっかりしてんな」
「女の子をメスな顔にさせるのがたまらんのよぉ」
「センシティブな話はやめてもらって」
結局またはぐらかされているような気がするが、話題からは逸らせたので問題はない。
たまに思う。
百合夏の事を好きでなくてよかったと。
幼馴染だし、付き合いは長いし顔もいい。
変態なのが
だけど、こいつを好きになっていたら、絶対振り回されて苦労するだろうなと思う。
ふざけながら、時々大人な顔をする
「んじゃ、私は帰るわ。天使ちゃんとの惚気話、期待してるよぐへへ」
「キモイ顔やめろ」
本当に、幼馴染とはやりづらい。
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