第129話 お出迎え。
留愛先輩の家を出て自宅の玄関まで来た時、唐突に家の鍵が鳴った。
このタイミングで閉められたのかと思い、ドアノブを掴んで回そうとすると勝手にドアは開いた。
「おかえりなさいませ、旦那様♡」
「…………ガチャリ」
なんとなくドアを閉めた。
黒須さんがメイド服来てお出迎えしてた。
すこぶる笑顔だった。
なんとなくもう一度ドアを開けてみる。
「おかえ」「どうしたの黒須さん?」
「未来の旦那様をメイド服姿でお出迎えです♡」
「……そうか」
「どうですか本部さん? 試作品なんですけども、可愛い、ですか?」
シンプルな黒いワンピースとメイド服用のエプロンにカチューシャ。
露出のない健全なメイド服姿と言える。
ワンピースがスカートの役割も果たしている為、足も見られる必要がない。
その上ストッキングを履いているのでちゃんと「クラシカル」っぽい。
「クオリティ高いですね。これなら問題無さそうです」
「そうですか。良かったです」
にっこりと微笑む黒須さん。
顔もスタイルも良い黒須さんがメイド服を着て微笑むのは流石にパワーがある。
「で、その服にはいくつ武器を収納できるんですか?」
「実はですねっ!!」
「はいアウト」
「…………しまった!!」
嬉嬉として収納美を語ろうとする黒須さんや、もう少し「女の子」らしくなってくれ。
君が上品になればなるほど暗殺器具という精神的脅威が増すんだよ相対的に。
とはいえ今回の学園祭では黒須さんの身に危険がせまってしまう可能性が実際に考慮されているわけである。
杞憂だと言う気にもなれない。
「それだと殺し屋メイドじゃないですか。学校の先生方にノリノリで武器の収納場所を教えたりしたらメイド喫茶できませんよ」
「……はぃ……」
「それと、女子の服はわりと機能性なんて重視してないことの方が多いので、他の女生徒には人気が出ないかもしれません」
「……そ、そうなんですか? なぜ?」
「デザイン重視だからです。よく女性が言うじゃないですか。「オシャレは我慢」だって」
実際、ワンピースとかだとポケットが無いデザインとかもある。
レディースのスーツとかなら別かもしれないが、オシャレを重視する世の女性はそんな印象を受ける。
千佳と真乃香さんの買い物に付き合わされた時によく思う。
その服、どこにスマホ入れるの? とか。
スカートだって、機能性で言えば通気性が良い、という利点くらいしかない。
男性が主に目を惹かれるのがスカートのゆらめきや揺れる胸、イヤリングやピアスである。
わかりやすく言うならば、動く物を本能的に見てしまうのである。
「機能性はともかく、デザイン的にはシックな感じがして好印象ですし、健全で良いと思います。後日学校でお披露目して問題がなければそのまま採用ですね」
「わかりました」
服の魔改造はしているらしい黒須さんでも時間はかかると思っていたが、こんなにも早くできるとは思っていなかった。
まあ、1から作る訳では無いとはいえ、簡単なことではない。
「あ、旦那様、お荷物を」
「え? ああ、ありがっ……て、メイドキャラは続行なのね」
「わりと楽しいですよ。……ん? 女の匂い」
「それ、古着のワンピース。貰ってきた」
「くんくん。……これは前に嗅いだことがある……冨次留愛子の服ですね」
「…………そうです。よ、よくわかりましたね……」
なにこの子怖い。
「…………やはりあの女は暗殺対象に…………ごにょごにょ…………」
「黒須さん、暗殺計画練るのやめてね」
べつに留愛先輩はなんでもない。
ただの料理友だち? が妥当な関係性だ。
こんなことで暗殺されてはうかばれない。
てか沖縄旅行の時くらいしか接点ないだろうに、なんで目をつけられてるんだ留愛先輩……
「ちなみに黒須さん、なんでタイミング良くお出迎えできたの? もしかしてずっと待ってた?」
黒須さんの事だ。
もしかしたら発信機とかまた僕の服や持ち物に仕込ませている可能性がある。
「窓からずっと来ないかなぁと見てました」
「……そ、そうか。うん。ありがとう」
出来上がったメイド服を見せたくてうきうきしながらまってる黒須さんが浮かんできた。
なにそれちょっと健気で可愛いなちくしょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます