第123話 いざ、メイド喫茶へ②
「お待たせしました!」
各々頼んだ料理やドリンクが届いた。
くまさんカレー、わりと可愛いな。
ちょっと恥ずかしいが、なんか食べるのももったいない気もする。
「ドキドキぴゅあぴゅあオムライスをご注文頂いたお嬢様にはおまじないを掛けさせて頂きますね」
「はいっ! 是非っ!!」
天使さん、目をキラキラさせてるなぁ。
こういうの好きなのかな。
「よろしければお嬢様のお名前などお教え頂いても宜しいですか? せっかくですし」
「天使美羽です」
「
「いやそれは透花ちゃ……」
「可愛い! それでいきましょ!!」
「ええっ?!」
黒須さんがそんな提案をした。
珍しいこともあるものだなぁと思っているとメイドさんがノリノリでおまじないを掛け始めた。
「ではいきます。『美味しくなぁれ♡ 美味しくなぁれ♡ 天使ちゃんに萌え萌えキュン♡』お嬢様、お召し上がりくださいませ♡」
「えへっ。えへへ。どうしよメイドさん可愛いぃ」
「こ、これがメイドさんの本気のおまじない……参考になりますっ!」
天使さんがぐへぐへし出すし、黒須さんは真面目に勉強してらっしゃる……
メイド喫茶に来て女子陣の方がテンション上がってるこの状況。
「せっかくなら桃原さ……桃原ちゃんもメイド服着てやってみては?」
「な、何言ってるの本部くん?!」
「メイド服の試着もできますよっ。お嬢……旦那様」
「メイドさん、わざとしてない? ボク男だよ。漢っ!!」
桃原がぷんすか怒っているが、全く覇気がないというか怖くない。
メイドさんのわりと楽しそうに桃原ちゃんいじりをしている。このメイド、やりおる……
「試着、ですか……天使さん、参考資料に欲しいので是非試着して頂きたいのですが」
「えっ?! あたしっ?!」
「ついでに桃原くんにもお願いしていいですか?」
「本部くん?!」
「いや、単純に桃原の肩幅とか背丈的にもメイド服作製の参考になるし、妥当な判断だ」
「確かにそうですね。色々とデータ欲しいですし」
「……ぐへへっ……そ、それではお嬢……旦那様と天使様、こちらへ。ぐへへ」
「…………なあ黒須さん、あのメイド、なんかヤバくない? 大丈夫?」
「私に聞かれても……」
「……ですよね」
許せ桃原。
それでも僕は桃原が恥じらっている姿を見てみたいんだ。
「とはいえ料理が来た直後に連行していくとは思ってなかった……」
「冷めちゃいますもんね」
「まあ、あのメイドなら仕方ない。諦めよう」
あのメイドさん、ちょっとやばそうだし。
その間にみんなの料理とかドリンクとかの写真を撮っておこう。
メイド喫茶という場所は普段とは違うサービスを提供する場所であるからか、見た目にやはり拘っている。
「このカレー、レトルトだな」
まだみんな揃ってはいないので少しだけ味見としてルーだけちょっと舐めてみた。
「レトルト、ですか。私には味の違いが分からないので、そういうのがわかるの羨ましいです」
「まあ、料理作ってるとなんとなくってだけです」
メイド喫茶という店の経営上、カレーがたくさん注文される事は少ないだろう。
一般的なカレールーを使うメリットとすれば、作り置きがしやすい家庭用サイズな点である。
「まあ、こういったお店の場合、レトルトに少し手を加えての販売はとても賢い案ですね。保存しやすく一品単位で簡単に準備できます。レトルトは手抜きだ、とかレトルトは料理じゃないとかよく言われがちですが」
どれだけ捌けるか分からないカレーを大量に作るのは賢い判断とは言えない。
僕がこの店に来てくまさんカレーを頼んだのはレトルトかどうかを調べたかった為である。
僕もこの店に来る前に一応メイド喫茶についてネットで軽く調べたが、ディティール重視にするか、本格的な味にするかの方向性を決めたかったである。
「黒須さんのココアラテのラテアートのくまさんも可愛いですね」
「これが、女子力、なんですね」
「いやそれは知りませんが」
てっきり3Dラテアートかと思ったが、そうではないようだ。
「私、ラテアートと聞くと、リーフやハートを想像していましたが、くまさんも出来るんですね」
「たしか、リーフやハート、薔薇なんかは爪楊枝などを使わなくてもできるみたいですね。練習は必要ですけど」
「メイド服を着た天使さんに目の前でラテアートを描いてもらったりしたらいいパフォーマンスになりそうですね。可愛いかもしれません」
「ああ、たしかに」
2日間しか営業しないとはいえ、目の前でメイドにラテアートを描いてもらえるというパフォーマンスはいいかもしれない。
少し調べおく必要があるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます