第122話 いざ、メイド喫茶へ①
「お嬢様方、旦那様、お帰りなさいませ♡」
「か、可愛いっ!」
「こ、これがメイドっ! ですか」
「ボ、ボク、メイド喫茶初めて来たよ……」
「……とりあえず入りましょう」
僕は今、天使さんと黒須さんと桃原の4人でメイド喫茶に来ている。
ニコニコ笑顔なメイドさんにお出迎えされていざ店内へ。
見明さんに色々言われた次の日なわけだが、今日来た目的はメイド喫茶を満喫したいが為ではない。
学園祭で行うメイド喫茶の為の視察というか勉強を兼ねているのである。
「店内も可愛い。メイドさん、あたしたち学園祭でメイド喫茶をすることになったんですけど、参考資料に写真とか撮ってもいいですか?」
「メイド長に確認致しますので、先にお席へどうぞ」
「はい! ……メイドさん、可愛い……」
天使さん、楽しそうだなぁ〜。
黒須さんはメイドさんたちのメイド服をまじまじと真剣に見つめている。
「色々とメイド服については一応調べてきましたが、自作するのも大変そうですね」
「既製品買うのはダメなの? 透花ちゃん」
「予算的に厳しいですね。ピンキリですが、平均的に5000円くらいは1着掛かります。学園祭での現場で回すには最低でも5着……8着くらいは欲しい。となるとかなり予算が……」
「むむむ……大変だなぁ」
ホームルームでメイド喫茶に決まった後、さらに話を詰めていく中で問題の1つとなったのがメイド服である。
当初は安物のメイド服を購入して黒須さんたち手芸部隊が手を加えてどうにかするという案があった。
しかし安くても2000円。
そこから手を加える為に小物を色々購入するとなると結局変わらない。
しかもそれを何着も作るとなるとであれば最初から作るべきか? などと色々あった。
加えて、学園祭というあくまで学校の行事である以上、できるかぎり生徒の成長に繋がるような方法にしてくれと担任からも言われている。
要するに「楽はするな」ということである。
「お待たせしました。店内であれば撮影は構わない、との事です。一応見学者用のストラップをつけて頂き、他のメイドなどの撮影の際はお声かけ頂けると幸いです」
メイドさんが微笑みながら首から掛ける名札みたいなものを手渡してきた。
すげぇな、手渡し方まで丁寧だ。
うっかり好きになりそうだった。
「ご注文などありましたらお伺い致します」
「あたしはドキドキひゅあぴゅあオムライスと、パステルカフェラッタを下さい!」
……なんだその恥ずかしい呪文みたいな名前……
「ボクは、あんまお腹すいてないからなぁ……じゃ、じゃあこのプリプリプリティーストロベリーパフェを下さい」
桃原はスイーツ担当責任者ということもあり、パフェを注文。
一体どれほどプリティーなのか気になるところではある。
「透花ちゃんは、どうする?」
「……どうしましょうか」
そう言って僕を見る黒須さん。
黒須さんからすれば、僕の作った食べ物以外に味がしないので意味がない。
黒須さんはメイド服制作の担当責任者である為に取材に来たわけだが、1人だけというもの申し訳ない。
「なら黒須さん、このココアラテとかどうですか? 可愛いラテアートが見れるそうですし」
「可愛い……ですか。私も女子力を身に付けなければならない身としては、大事かもしれません! メイドさん、このココアラテを下さい」
珈琲やココア、抹茶などのラテアートはインスタ映えは非常に良い。
その為僕も何度か調べたことがあるが、生で見たことはなかった。
黒須さんには悪いが、参考にさせてもらおう。
「えっと……僕はじゃあ、くまさんカレーともちふわパンケーキ、それとブレンドコーヒーをお願いします」
「かしこまりました。旦那様のブレンドコーヒーは食後にお持ち致しましょうか?」
「だ、旦那様…………はい。食後でお願いします」
「かしこまりました♡」
「メ、メイドさん、ボクも男なんだけど……」
「えっ?! あ、いえ! 失礼致しましたぁ! あまりにも可愛いので女性かとっ!」
ギャルで
まあ、桃原は実際男の娘みたいなものなので仕方がない。
「天使さん、なんでボクにドヤ顔して親指立ててるの?」
「可愛いは正義だからだよっ」
この頃はわりと天使さんは桃原に対しての可愛いいじりは多い。
高校生活が始まった当初こそオドオドしていた桃原も、今ではわりとクラスに馴染んでいる。というか僕より馴染んでいる。
「私、たまに桃原さんに嫉妬します。どうしてそんなに可愛いのか。羨ましいです」
「ちょっ! 黒須さん!! からかわないでよっ」
平和だなぁ。
そして黒須さんのそれは多分本気で言ってる、というか素で言ってるんだろうな。
クラスの美少女から羨ましがられる可愛いさを持つ男の娘。
ラブコメ作品で男の娘がメインヒロイン枠にいたりするのも頷ける。
学園祭が終わったら桃原にメイド服を着せよう。
僕はそう決意した。
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