第83話 The・水着回①

 お盆3日目のウークイも無事に終わり、今年はなんとかなった。

 そして翌日。


「やっと海に入れるわっ!!」


 我々は今、海にいる。

 女性陣は眩しい肌を露出させ、意気揚々と砂浜を走り回り胸を揺らす。


「やっぱり沖縄の海は紫外線強いね。ボクはもう溶けそうだよ」

「パーカー着てて暑くないですか? 桃原さん」


 海パンに薄手のパーカーを羽織り僕と同じくビーチチェアに座る桃原。

 ファスナーの絶妙な位置により男の娘さが引き立っている。不思議なものである。


「直人くん! 見て見て水着!」

「いいねぇ〜いいよいいよぉ陽向〜」


 バカップルふたりはしっかりはしゃいでいる。

 楽しそうで何よりである。

 直人さん、アラフォーなんだよなぁ。

 どう見ても20代後半くらいなのがほんと意味わからん。


「健きゅんも海入ろっ!」

「いや僕はいいです。ベタベタするし」

「しっかり水着着てるじゃんおにーちゃん、行くよ〜」

「いやだ」


 海は入るもんじゃない。

 眺めるものである。

 暑いし貝殻とか踏んだら痛いし。


「ボクが言うのもあれだけど、入らないの?」

「そもそも僕は泳げない。ので入らない」

「沖縄の人は全員泳げるんだと思ってたよ」

「地元住民がすべからく泳げるわけじゃないですし、名産品とかおすすめ観光地を知ってるわけじゃない。思っているより地元住民は地元に興味無い人の方が多いんですよ」


 もちろん泳ぐのが好きな人もいるし、泳ぐよりも釣りが好きな人もいる。

 結局人によるのだ。

 そもそも僕はインドアだ。

 できれば海に入りたくない。


「あれ〜? 本部は海怖いんだ〜?」

「冨次先輩、そういうの性格悪いですよ。モテませんよ」

「うるさいわねっ」


 どんだけこの人僕を敵視してるんだよ……

 負けず嫌いにも程があるんじゃないですかね?


「本部、ウチらの荷物ここに置いてていいのか?」

「どうぞ」

「けーちゃん、いっしょにおしろ、つくろ」

「お城ですか、いいですね楽しそうですね」


 見明姉妹もしっかり水着を着て遊ぶ気満々である。

 見明さんは水色のビキニと意外な色合いながら普通に似合っている。

 長い銀髪をポニーテールにしているのもありうなじが眩しい。


「美心、おねーちゃんと一緒にお城作ろうな」

「え〜。けーちゃんとがいい」

「あいつはだめ。変態が伝染うつる」

「そんなウイルス保菌してませんから」


 誰がロリコンじゃ。

 てか小学生相手に変態なんてワード教えるなよお姉ちゃん?


「ちょ、ちょっと百合ちゃん、押さないでよぉ」

「押されなくても行きますから、喜屋武さん」

「ほれほれ」


 百合夏に押されて天使さんと黒須さんも僕らの所に荷物を置きに来た。


「ささ健、感想を」


 なんでこいつこんなにニッコリしてるんだよ。

 若干息荒いぞお前。

 美少女ふたりに触れてはぁはぁするなよ。

 やっばり百合夏こいつは腐ってやがる。


「ど、どうかな、本部くん」

「私の水着は天使さんに選んでもらったものなのですが、変じゃないですか?」

「似合ってますよ。ふたりとも」


 天使さんは真っ白のビキニにツインテール。

 スタイルの良さも相まってかなりグッときた。

 ツインテールがここまで似合うとは予想外だった。


 黒須さんは黒のビキニ。

 どちらもシンプルなデザインなわけだが、スタイルが良くないと着れない水着である。

 黒須さんに至っては真乃香さんと同等の胸であるため、普段の奇行や危ない発言すら忘れてしまいそうになった。


 落ち着け、黒須さんは僕の首元にナイフを突き付けた人物である。

 ハニートラップには気を付けなければ……


「私はスクール水着があるからいいの言ったのですが……」

「せっかく沖縄行くんだしいいじゃん」


 黒須さんのプロポーションでスク水着を着て海に入るのはそれはそれで背徳感あるだろうから天使さんグッジョブ。

 黒須さんのスク水着、胸元にしっかり「とーか」ってロリっぽく拙い文字でしっかり名前書いているからな……

 なんでそんなとこ拘ってるんだとむしろ関心してしまう時がある。


「慶斗、どっちが泳げるか勝負!」

「鈴ちゃんには負けないわよ」


 生徒会長たちは速攻で泳ぎに行った。

 いやあの人たちほんと大丈夫か?

 ほんとに生徒会か?


「なんか、こういうのいいね。ボクはもうなんだか眠いよ」

「そうですね」


 青い空、青い海。白い砂浜。

 はしゃぐクラスメイトたち。


 久々にのどかな日常である。


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