第30話 ゴールデンウィーク明けの学校。
「本部くんおはよ」
「おはようございます桃原くん」
我儘な保護者を無事会社へ向かわせての学校。
なにがどう変わった訳でもない高校生活。
「おはよー!」「天使ちゃんおっす」「おはよ!」
天使さんも登校してきたらしく、それだけで教室が華やかなになった。
「お師匠おはよ!」
「おはようございます」
「桃原くんもおはよ!」
「…………はよございま…………」
相変わらず僕以外には心を閉ざす桃原。
しかしそんな事はどうでもよかった。
「天使さん、今日はメガネなんですね」
「そーなの。コンタクトがね〜」
そういえば最初に天使さんに料理を教えてた時も天使さんは黒縁メガネを掛けていた。
あの時は早く帰りたかったからとくに何かを思った事はなかった。
だが天使さんのメガネ姿というのは新鮮であり可愛い。
なによりも普段から掛け慣れている感がしっかりあるのがいい。
……考えてみれば僕は、こんなメガネ美少女の太ももを枕に眠りこけていたのか……
「てかウチ、天使ちゃんのメガネ姿初めて見たかも」
「そいえばそうだったね〜」
「いいな。可愛いぞ天使ちゃん」
会話に参戦してきた見明さんも天使さんのメガネ姿を見て褒めている。
「な! 本部もそう思うよな?」
「あ、はい」
見明さん、なぜ僕に同意を求める……
たしかに可愛いのだ。
少なくとも、僕みたいなモブが憧れを抱く程度には。
「なんか頭良さそうに見えるぞ天使ちゃん」
「そ、そうかな?」
「もうそのままメガネで過ごせば良いのに」
「今日は仕方なくだから」
個人的には是非ともメガネ姿でお過ごし頂ければ嬉しい。
いや、新鮮味という意味では定期的にメガネ姿で登校してもらう方がいいかもしれない。
「天使ちゃん、ちょっと」
見明さんがスマホを取り出して撮影会が始まった。
見明カメラマンによるディレクションで次々に指示が飛ぶ。
「そうそう。ちょっとメガネをズラして上目遣いで……好きな人を考えてるみたいな顔で」
なんだそのディレクション。
「な、なんか恥ずかしいんだけど……」
「喋んなくていいの」
「すみましぇん」
しゅんとしながらも従順に見明さんの指示に従う天使さん。
嫌なら普通に断ればいいんじゃないか?
なんか天使さんともちょいちょい目が合うし、助けて欲しいのだろうか?
恥ずかしそうに頬を赤らめながらモデルをし続けているが、僕としては見明さんにしばかれる可能性を視野に入れて助けるという選択肢はない。
別に服を脱がされるとかじゃないし問題ではないだろう。
「いいね〜いいねぇ〜」
見明カメラマン、ノリノリだなおい。
「本部監督、どうっすか?」
「……なぜ僕が監督……」
急なコントに付き合わせないでくれと思いながらも見明さんのスマホに目をやった。
「…………うん。いいんじゃないかな?……うん…………」
机の上に座り、少しズレたメガネ越しの上目遣い。
頬を赤らめ恥ずかしそうにしつつも
やんわりと胸を強調されるような姿勢は健全な服装なはずなのに色気を感じる。
スマホ撮影でここまでやれるのか……
見明さん、カメラマンの才能あるんじゃないか?
「良いかどうかは聞いてないんだよ。可愛いかどうかだろ?」
「……そりゃまあ、可愛い、です」
「………………」
ニヤつく見明さん。
頬を赤らめたまま
「天使さん、料理の勉強よりモデルになった方がいいですよきっと」
「……料理は好きでやってるだけ、だし」
カメラ越しではない天使さんの上目遣い。
なにか言いたげな表情に僕はそれを読み取れなかった。
「本部、あとでこの写メ送っとくわ」
「え! ちょっと見明っちゃんっ?!」
いたずらっ子な笑みで天使さんから逃げる見明さんと天使さんの愉快な追いかけっこは担任が教室に来るまで続いた。
ちなみにあとで届いた写メはしっかりと保存した。
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