第15話 天使さんのお風呂場。

「あったまるぅ〜♪」


 本部くんと今日も料理を作って、ママとご飯を食べれたし、ちょっとずつだけど出来ることが増えていく。


「明日は何作るのかな」


 あたしの独り言はぽかぽかのお風呂場に木霊こだました。


「入浴剤によってつるつるになったあたしのお肌と本部くんが作ったオムレツ、どっちが美肌か……」


 料理を教えてもらうようになってからまだ日は浅いけど、今ではあたしの得意料理のオムレツ。

 それでも本部くんの作ったオムレツには敵わない。


「やっぱお師匠はすごいね〜」


 おんなじ高校1年生とは思えない。


「あたしはまだ料理を楽しめていないのか」


 そんな事はないとは思う。

 難しくてぎこちなかったりはするけど、それでも美味しいものを作れるのはとても楽しい。


「う〜ん。やっぱ手際がいいんだよね〜お師匠」


 あたしはスマホでお師匠がオムレツを作っていた時の動画をまた見ていた。

 IHは初めてって言ってたのに、なんでこんなに無駄がないのか。


「…………ふふっ。本部くん、料理作ってる時、楽しそうなんだよね」


 本部くんはそんなに笑ったりはしないし、表情がころころ変わったりはあまりしない。

 たまにあたしが笑われてる時はあるけど、基本は普通の顔をしてる。


 けどこうして繰り返し動画越しに本部くんを見てると、ちょっとした表情の変化とかがわかるようになってきた。


「こことかね」


 オムレツをひっくり返す時とか、ちょっとだけ心配そうだし。

 綺麗に出来ててほっとしてる表情とかもそう。

 普通に見てたら気付かないほんとにほんのちょっとだけなんだけど。


「1回1回真剣なんだろうなぁ」


 お皿に盛り付けて完成したオムレツに少しだけ口元を緩ませる本部くん。

 嬉しそう。


「そのわりには「普通にできた」みたいな顔してるんだもんなぁ」


 まあでも、あたしもお師匠が側にいてオムレツ作ってた時はちょっと緊張したし、そうなるよね。

 人に見られてるって考えると、ちょっと緊張くらいはする。


 べつに試験とかじゃないし、緊張することなんてないんだけどさ。


「『頂きます!! うんまぁぁぁ〜』」


 おう……あたしの第一声の語彙力よ……

 あ、その後ちゃんと食レポしてるわ。

 いやでもほんの美味しかったんだよな〜。


「あ……」


 オムレツ食べてる時は気付かなかったし、自分でオムレツ作ってた時も料理部分をヘビロテしてたから気付かなかったけど本部くん、こんな顔してたんだ。

 すっごく優しい顔。

 なんなら今までで1番笑顔って感じ。


「てかちょっと浸かり過ぎたかもっ。のぼせそう〜マジやばいっ!!」


 いつのまにか全身ぽかぽかだし、なんなら顔だってちょっと熱いし。


 なんとなく、鏡は見れなかった。

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