第5話 感謝共有マジ天使。
僕のスマホが珍しく震えた。という震え続けている。
『あ、もしもし、お師匠? 電話だいじょぶだった?』
「……ああ。はい。大丈夫です。はい」
どうせ真乃香さんだと思ってテキトーに取った通話は天使さんだった。
てっきりまた酔っ払って「迎えに来て」とか言われるとばかり思っていた為、急な天使さんからの電話にあたふたしつつもなんとか返事をした。
『急にごめんね〜。いやさ、ママとの晩御飯にお師匠から教わったオムレツ作って出してみたらママがちょー喜んでさー嬉しくって。えへへ』
まじで天使過ぎないか? いや
「お母さんも喜んでくれたのなら良かった」
『写真見て!! 教わってからの夕飯で作ったわりにかなり上手くない?!』
慣れない手つきでライン通話からコメント欄に行き、添付された天使さんからの画像をタップした。
「……上手いな……」
『やったぜっ! お師匠に褒められた! えへへ〜』
教えた後は流石に練習でさらにオムレツを作るのは無理だった。
卵を結構使う料理だったし、僕が差し入れたケーキも2人で食べた(天使さんがめっさ喋ってた)。
その後の夕飯時、つまり2回目でここまで綺麗な色のオムレツを作れるようになるとは思ってもいなかった。
形こそ少しだけ
「天使さん、実はやればできる子?」
『かもしれない!』
天使さんのドヤ顔が早くも想像できる。
しかし全く腹は立たない。可愛いは正義ってほんとなんですね。
『ま、作る前にお師匠の調理の動画めっさ見たけど』
「参考になったのなら良かったです」
後で
『ママがね〜「
天使さんがどんな想いで料理していたのかは僕は知らない。
でも、こうして楽しそうに話す天使さんはとても眩しい。
「天使さんならきっと良いお嫁さんになれますよ」
『お師匠ありがと〜。やっぱアレだね、胃袋を掴むって大事だねマジで』
「まあ、昔のプロポーズで「お前の作った味噌汁が飲みたい」とか言うセリフがあったくらいですし」
今の人がそんなクサイ言い回しなんてしないだろうけど、美味いご飯は大事だ。
『あたしもつくづく思ったよ〜。お師匠のオムレツ食べてさ、そういうプロポーズの意味とかわかっちゃったもん。そりゃそんなプロポーズもしちゃいますわ〜って』
終始楽しそうに話す天使さん。
内容だけで言うならば、ただ教わった料理を家族に振舞って喜んでもらったというだけの話。
だけど、それを僕なんかに話す天使さんはきっと素で良い人なのだろう。
金髪ギャルだからと最初は身構えていたけど、ここまで喜んでもらってはむしろ僕の方こそ感謝したくなる。
『あ、お風呂空いたから入ってくるね。今日はほんとにありがとね、本部くん』
「いえ。こちらこそ』
そうして通話を切ろうと指を伸ばすと、遠巻きに天使さんの声がまた聞こえてきた。
『お師匠、また良かったら料理、教えてもらっていい?』
「はい。良いですよ』
『やった! あたし頑張る!! じゃあまた学校でね』
そう言って電話は途切れた。
ただの料理を教えるだけの約束。
それでも、僕の高校生活は少しだけ華やかになると感じた。
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