第5話 疲労と優しい子守唄

「ファナ、君が思う幸せって何だい?」そんな問いを冬弥が私に投げかける。

「笑わないで聞いてくれるなら答えてあげるよ。」ソファーに寝転び本を読んでいる冬弥にそう答える。

「俺が君の答えに笑ったことなんてあったか?」それに対し私は少し考えて答える。

「……たぶんない……と思う。」ほらね。と言いたげな彼の顔を見ながら私は本題についての答えを考える。

「私の幸せ……私は今まで特に不自由なく暮らしてきたと思う。でも貴方と出会って、恋をして一緒に居るようになって……貴方とずっと一緒にいられる今が幸せ。」口に出して答えるのはやっぱり恥ずかしかった。でも、自分の幸せを再確認するためにもこうして口に出して言うことは大事なのかもしれない。


「……お姉さん!ファナお姉さん!ねぇ聞いてるの?」私の服の袖を引っ張る力と私を呼ぶ声が聞こえてくる。

「あれ、私…今…。」朝弥と一緒に遊んでる間にいつの間にか寝てしまっていたらしい。しかもあの人との夢まで見るなんて…。

 呼びかけに対して反応がない私を心配した朝弥が「ねぇ、お姉さん疲れてるんじゃない?早いけど今日はもう寝ることにする?」と私を気遣ってくれる。

「うん、そうしよっか。ごめんね朝弥。気を遣わせてしまって…。」

 そうして頭を抱える私に智也は「大丈夫!いつも僕のお世話ばっかりしてくれてるからたまにはお姉さんを休ませてあげないと!」と無邪気な顔で言ってくれた。…ほんとによく出来た可愛い子だ。

 そうして私達は寝室に向かう。

「今日は僕がお姉さんを寝かしつける番だね。…うろ覚えだけど、僕がお母さんに歌ってもらってた子守唄を聞かせてあげるね!」ベッドに横になる私の横で朝弥は優しく唄を歌い始める。

 段々と眠くなって重くなっていく瞼と凄く落ち着く朝弥の声。あまり深く聞かないようにしていたこの子の両親が歌ってくれたという大切な唄。

「ねぇ、朝弥。私が起きたら君の両親の話…聞かせてくれないかな。」その問いに朝弥は深く頷く。

「うん。色んなお話聞かせてあげるね。ふわぁ…なんだか僕も眠たくなってきちゃった。おやすみなさいファナお姉さん。」そう答えて朝弥は眠る体制に入る。

「うん、おやすみ。朝弥。」

 明日聞くこの子の親の話を楽しみにしながら私は深い眠りについた。

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