第4話 お菓子作り

「ねぇ朝弥、私のお菓子って美味しい?」自分のお菓子を食べてくれる人が出来たからと朝弥にそんな問いをなげかける。「ファナお姉さんのお菓子すっごく美味しいよ。特にガトーショコラが僕のお気に入り。」そんな風に朝弥はいつもお気に入りの本を読みながら私が喜ぶような答えを返してくれる。

「そっか。気に入ってもらえて嬉しいよ。それで、今日は新しいお菓子を作ろうと思うんだ。何を作るかは食べるまでは秘密だからね。」そうやって会話しながら私はあの人と一緒にいた時のことを思い出す。…あの人ともこうやって暮らしてたな。あの時と同じぐらい今は幸せだしなんの不満もない。でも、あの人が旦那として隣にいてこの子が私たちの子供だったら…なんて妄想もときどきしてしまう。

「でも今は、この子のためにも私が頑張らなきゃね。3時に間に合うように作らないと。」そうして今日のお菓子作りが始まる。

私がお菓子を作っている間、朝弥は本を読んだり人里から買ってきたゲームをしたり、1人でお昼寝をしたりしている。まだ子どもだと言うのによくできた子だ。この子の生い立ちについて私からは聞かないようにしているがどんな風に育ってきたのか、少し気になるものである。そうやって色んなことを考えながら私はお菓子作りを進める。誰かのために作ってそれを食べてもらう、そして感想を聞かせてもらうってのはとてもいい事だと思う。だから私は朝弥に凄く感謝している。1度諦めていたお菓子作りもこの子のおかげでもう一度楽しもうと思えた。

そんなこんなで今日のお菓子ができ上がる。

「出来た!おいで、朝弥。」その呼び掛けにすぐさま反応して椅子に座る。「ドーナツだ!久しぶりに食べるから楽しみ…ねぇ、ファナお姉さん食べてもいい!?」待ちきれないといった感じで朝弥は身を乗り出して確認してくる。

「良いよ。君のために作ったんだからいっぱい食べな。まだまだあるからさ。」そう言うと同時に朝弥はドーナツを1つ口に投げ込んだ。「おいひぃれふ!」食べ物を口に入れたまま喋ったせいでちゃんと言葉を発せていない。それがまた可愛いのだが…私はちゃんと注意する。「聞いた人が聞き取りにくいから口から物が無くなってから喋ろうね。」それに対して朝弥は首をブンブンと縦に振って反応する。

こうやって美味しそうに私のお菓子を食べてくれる人が居るからまた作ろうって、作ってて楽しいなって思える。ほんとにこの子は可愛くて天使と言っても差し支えないぐらいだった。

「また作ってあげるから落ち着いて食べな。」私は目の前で幸せそうにドーナツを頬張る朝弥を見てそう呟いた。

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