第3話 新しい趣味と大きな出会い

「もうあの人は居ないんだし1人だけでも楽しめるように趣味を作ろう。」私はまず初めに趣味を作ることを目標に生きていくことを決めた。

 私だけでも楽しめる趣味…まずはお菓子作りから始めてみよう。そうして私はクッキー、プリン、ケーキ等色んなお菓子を作る。しかし食べるのは全て私。もうあの人は居ないから美味しいかどうかの感想を聞くことは出来ない。「お菓子作りじゃダメだ。次…!」

 次に私は風景画を描き始めた。私の家の周りは自然で溢れている。だから綺麗な風景画を描くことが出来た。「この趣味は良いかも。他にも探してみようかな。」そうしていくつか試してみてそのうち風景画、小説なんかの書くことを目的とした趣味が多くできた。それでも何をしてもあの人と一緒に居た時の方が楽しかったと思ってしまう。

 私は毎日寝る前に日記をつけることにした。どうしても思い出してしまう彼についての話や自分の話、今日のご飯についてなんかも沢山書いた。そんな生活が数ヶ月続いた頃だった。ある日、人が近づかないような森の奥にある私の家の扉がノックされる。「どちら様ですか。こんな所に何の用が…。」そう尋ねたが答えが返ってこない。少し怖かったが私は意を決して扉を開ける。扉の外にはボロボロになって意識を失いかけている男の子が立っていた。その顔に私は見覚えがあった。いや、見覚えがあるなんて程度じゃない何十年間も一緒に居たあの人の幼少期にすごく似ていたのだ。「と…冬夜とうや!?」違うと分かっていてもその名前が口から零れる。私がそんなことを思っていると男の子が最後の力を振り絞って「すみま…せん。ご飯を少し、食べさせてくださいませんか。」と言いながら私の方に倒れかかってきた。この子には少し聞きたいことがある。死なせる訳にはいかない。

「分かった。すぐに用意するから待ってて。」そうして私は昨日食べた晩御飯の残りを温めて男の子の所に持っていく。「昨日の晩御飯だけど喉詰まらせないようにゆっくり食べてね。」そう言って彼の前に差し出すと、餌を与えられた肉食動物かのように目の前のご飯に食らいつく。「美味しい、美味しいです!こんな美味しいご飯久しぶりに食べました。」そんなふうに言いながら綺麗な目をキラキラと輝かせる。「ところで君、こんな何もない所に来てどうしたの?しかもご飯も久しぶりに食べたって…。」その問いに男の子は平然と答える。「えっと、両親に捨てられて行くところを無くしてさまよっていたところ気づいたらこの森に居て歩き続けてたらここに着きました。」私は呆然とした。1番近い人里からこの家まで10数キロはある。そんな距離を1人で…しかも両親に捨てられたなんて。「そんな事が…質問続きで申し訳ないんだけれど君、冬夜って人を知らないかな。」明らかに歳も違う、ただ顔が似ているという理由だけでそんな疑問をこの子にする。

「とうやさん…ですか。あっ、同じ方かは分かりませんが僕の親族に1人、数十年前から行方不明だった人がいたはずです。名前の漢字を聞かせていただいてもいいですか?」この子に顔が似ていてしかも数十年前から行方不明?もしかすると…そう思い私は男の子に冬夜の漢字を教える。「冬と夜これでとうやだけど。」その問いに男の子は首を傾げる。「そうですか、僕の知ってるとうやさんは冬に弥生の弥で冬弥です。力になれず申し訳ありません。ご飯美味しかったです。ありがとうございました!」そう言って私の元から去ろうとする男の子を私は引き止める。「ねぇ、ここから出ていったとして帰るところはあるの?もしないんだったら…一緒に住まない?」あの人と顔が似ているからか私はこの子と一緒に居たい。もう誰とも結ばれないようにしようと思っていたのに。「いいんですか!?実は帰るところもないのでこれからどうしようか悩んでいたところなんです。えっと…これからよろしくお願いします。」礼儀良くそんな挨拶がをする男の子。

「こちらこそよろしくね。えっと、そういえば君の名前聞いてなかったね。」今まで聞くのを忘れていた男の子の名前を問う。

「僕の名前は朝弥(ともや)です。お姉さんの名前は?」その質問に私は答える。「ファナ。ここら辺じゃ最後の一人のエルフだよ。」

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