第2話 別れと決意

朝、目が覚めると隣で最愛の人が冷たくなっていた。分かっていた、彼がもう長くないこともそれを私に伝えようとしていたことも。でも分かりたくなかった。もっと長くずっと彼と一緒に居たかった。

「私はこれからどうすればいいの…。」そんな弱音が思わずこぼれる。ふと彼のいつも使っていた机に意識が向いた。開けるなと言われていた引き出しが目に入る。「もうあなたは居ない。だからその約束は守らなくていいよね。」私は立ち上がって引き出しに手を伸ばす。引き出しの中には1枚の手紙と小さな箱が入っていた。

「これがあの人がずっと隠してた物…。」そう呟き私は手紙を開く。その手紙は遺書に似たものだった。


「ファナへ 俺と君は種族間の違いから寿命の差で俺が先に死んでしまうだろう。でもどうか後追いだけは考えないでくれ。そんなことをされても俺は喜ばないしあの世に来た君に説教をするだろう。そして君には俺のことを忘れて幸せになって欲しいんだ。とはいってもこの世界にいるエルフは君だけだろうし1人で生きていくことになるかもしれない。そう思って俺は1つのプレゼントを用意した。おそらくこの手紙と一緒に置いてあるだろう箱の中にそれは入っているよ。喜んでくれれば俺も嬉しい。それを俺だと思って身につけていてくれ。それと、最後になるけど今までありがとう。ずっと大好きだったよ。」

そう書かれていた。涙が止まらない。その涙を袖で拭い私は1つ決意をする。箱を開き中身を見る、そうしたら彼との約束通りには出来ないけど、私は誰とも結ばれず一人で生きていこう。とそう決意した。

私は小さな箱を持ちドキドキしながら箱を開ける。中には…綺麗な指輪が入っていた。「これって…何の指輪のつもりだったんだろう。婚約?それとも結婚?それともただの指輪…?」その真意を確認するすべはもう無い。ベッドで冷たくなっている彼を見る。子供がおもちゃを買ってもらった時のような幸せそうな寝顔だ。「すごく幸せそうな顔…火葬してあげないとね。」自分1人だけで幸せになる自信はないし彼を忘れることなんてできないと思う。それでも彼との約束通り私は後追いせず頑張って生きていこうと思う。私は彼を見送りながらそう考えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る