第3話
その後、いくつかの条件と引き換えにミゼは側妃としてレオナルドに嫁ぐことになった。
その条件とは……まずはミゼとレオナルドとの婚姻を白い結婚すること。
さらに、ミゼが側妃ではあるが正妃と同等の権限を持つということ。名目上、男爵令嬢であるルミアを立ててはやるが、下になるつもりは毛頭ない。
また、ミゼに対してレオナルドが暴行などを働こうとした際、理由を問わず離縁することも認めさせる。
その際にレオナルドに非がある場合には、貴族の合議によって王家とレオナルドにはペナルティを受けてもらうことになった。
さらに夜会で恥をかかされたことへの賠償として、王家の直轄地で重要拠点でもある交易都市の下賜を要求すると、さすがの国王も苦い顔をしていた。
それでも、「だったら側妃になりません」と言うと渋々ながら受け入れた。
そもそも、無理を言っているのは王家の方なのだ。
他の貴族も今回の件には呆れ返っており、アローサイト侯爵家の側に立ってくれたため、どうにかすべての条件を呑ませることができたのである。
かくして、侯爵令嬢であるミゼ・アローサイトは自分を嫌っている王太子のもとに側妃として嫁ぐことになった。
諦めを胸に王家に嫁ごうとしているミゼであったが……輿入れの前日、不思議な夢を見た。
夢の中でミゼはローウッド王国とは別の国に住んでおり、そこで『栄養士』という病人などの食事を管理する仕事についていた。
(これはまさか……私の前世の夢?)
この世界にはたびた前世の記憶を夢に見る人間が現れている。
そういった人間は決まって特殊なギフトを持っており、夢の内容はギフトにかかわるものが多いのだ。
夢の中で栄養士として働いていたミゼは、食事によって『血糖値』がどれだけ変動するかを気にしながらメニューを作っていた。
どうやら、『血糖値』というのは血液中に流れている『糖分』の量のことを指しているらしい。
食事や間食によって変動するそれは人間の健康に大きな影響を与えており、基準値より高くても低くても病気を発症する恐れがある。
その夢を通じて、ミゼはようやく自分が持っている【血糖値】という謎のギフトの使用方法を悟った。
同時に、これが人間の命をも左右する力であることも。
(やはり役に立たないギフトなどなかったのですね……この力、使い方によっては王族すらも殺すことができる……)
ミゼは戦慄を覚えながら目を覚ました。
この力をどう使うべきだろうか?
復讐のために使用するべきか。それとも、王国の繁栄のために使用するべきか。
悶々と思い悩みながら……ミゼは結婚式すら挙げてもらうことはなく、王太子レオナルドに嫁いでいったのである。
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