第78話

 翌朝、クリストフ一行はメルトと決めていた待ち合わせの店で朝食を取っていた。

 その店はクリストフが金に物を言わせ、午前中は無理矢理貸し切りにしており、入ってくれるのは店頭に立っている騎士団に許可をもらったものだけ。

 そんな場所でメルトたちのことを待っていた。


「お待たせしました〜〜」


 そう言って店に入ってきたのはメルトとアルカンシェルの2人。

 クリストフが手をふると2人は前に座った。


「朝食は済ませましたか」


「まだだよ。ここで食べていいかな」


「大丈夫ですよ。ではその間に私達は馬車の準備を済ませてきます」


 メルトが来たのを確認したクリストフは店前においている馬車の点検をするために店内にいた魔法師団と少数の騎士たちともにを店を出た。


 ★


「お前らには今日からしっかり働いてもらうぞ」


「「はい!!」」


 貴族というものは騎士団や魔法師団から嫌われていることがよくある。

 その理由は自分たちのことを考えずに好き勝手に使うからだ。

 だがクリストフは騎士団や魔法師団からの信頼が厚い。

 それは共に訓練をした日々があり、クリストフはその訓練の辛さをよく知っているため十分な休暇を配下には与えているためだ。

 そういった事により、クリストフの配下はクリストフに忠誠を誓っているものが大勢いる。


「今回は獣王国の娘、メルト様と共に帰ることになっている。メルト様には不自由なく、安全に帰ってもらうことが一番だ。今からは護衛の編成、そして馬車への付与魔法をしてもらう。騎士団所属のそこの5人には帰国途中に必要になる可能性のある物の買い出しに行ってもらう」


 買い出し組の5人にクリストフは金貨十枚ずつ渡し、残ったのは魔法師団はクリストフの指示のもと仕事を開始した。


 魔法師団が初めに行ったのは馬車の強化。

 そこらの盗賊に襲われても壊れないのは当たり前として、もはや攻撃を反射して敵を討伐するシステムを導入する。

 次にするのは車内の居心地の良さ。

 車内の温度を一定にし、常に人間が快適だと感じるを維持させる。

 また空気の換気がなければ不快に感じるため、常に空気の換気をできるシステムも導入する。

 椅子は元から最高品質のものだが、さらにふわふわのもふもふにし、ベットのような品質を実現した。

 車内の明かりは魔力を通すことでいつでも好きな明るさに変えられるようにし、揺れを完全になくした。

 車内は快適な空間になり、不自由なく過ごせるようになった。

 これでまずはクリストフとメルトの乗る馬車の改造が終了した。

 その後は道中で別れたあとにメルトが乗る場所にも同じく改造を施し、次は騎士団と魔法師団の乗る馬車の改造に移った。

 結果、騎士団の馬車と魔法師団の馬車も似たような改造を施され、最強の隊列が完成したのだった。


 ★


 メルトの朝食が終わり、しばらくクリストフたちが話をしていると買い出し組がようやく帰ってきた。

 人数分の数日間の食事に夜間に寝ずの番をする者たち用の間食、そして外でのキャンプのときに使う鍋や椅子を買ってきた5人は思っていたよりも荷物が多く、ここまで持ってくるのに苦労していた。

 その荷物の収納が終わるとバージスがやって来て、出立の準備が完了したことを伝えにきた。


「ではそろそろ行きますか」


「はい!」


 メルトは差し出されたクリストフの手を取り、店を出ていった。

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