第7話
「バーグも来たのか」
「はい。微力ながら手伝わせてもらいます」
クリストフが麻薬の栽培地域に着いたときにはバーグが既にいた。
クリストフよりも先に来て、ここに出入りする人の監視をしていたようだ。
「出入りしている人はリスト化しましたので、後で渡します」
「わかった。先にこっちを片付けよう。【終焉の灯火】」
魔法が発動し、麻薬の栽培場に小さな火が灯る。
古代魔法、終焉の灯火は術者が止めるまで決して消えない火。
密閉しようと水をかけようと消えることはない。
「【昇華・終焉の業火】」
【終焉の灯火】は古代魔法特有の【昇華】を使うことで進化した魔法になる。
【終焉の業火】は基本的な効果は【終焉の灯火】と変わらない。
だが、【終焉の業火】は【終焉の灯火】よりも早く燃え広がり、火力も強い。
そして何より優れているのは燃やす対象を決めることができる点だ。
今回の麻薬の栽培場は見回りに来る騎士を欺くために外側で通常の作物を育て、内側で麻薬を育てている。
そのため、普通に燃やしてしまうと作物まで燃やしてしまう。
その点、【終焉の業火】だとその心配はいらなくなる。
加えて麻薬は燃やすと有害だが、その有害なものも燃やす対象にしているため、後処理も楽になる。
余談だが、いきなり【終焉の業火】を使うこともできるが、そうすると魔力消費量が多くなるため今回は【終焉の灯火】からの【昇華】で【終焉の業火】を使っている。
近くに住んでいる麻薬の売人たちが燃えていることに気づき、水をくんできて消火活動を始めだした。
だが火はどんどん燃え広がり、泊まることはなかった。
その間、クリストフとバーグはここを出入りしていた人たちを片っ端から捕まえていた。
翌朝、サティラの動かせる騎士たちが後処理としてやってきて、麻薬栽培の痕跡を見つけ、辺りを統治している領主の屋敷に捜索に入り、麻薬の売買に関わっている人たちがすべて捕まった。
そして残った土地は普通の畑として利用されることになった。
「クリストフ、バーグさん。お疲れ様でした。後処理も無事に終わり、お陰様で麻薬の売買はほとんど無くなりました」
「なら良かった」
「これで坊っちゃんは学園祭に集中できそうですな」
「そうだね。これ以降、何もなければいいんだが」
★
第一学園の学園祭ではクリストフの出る幕はなかった。
起きたのは小さな揉め事くらいで、それくらいの解決は騎士団だけで十分。
執行官が手を出す必要などない。
そして、第二学園の学園祭の日がやってきた。
今日は前々からアリスと約束していた第二学園の騎士候補生を見に行くことになっている。
「おまたせ」
「俺もいま来たとこだ」
二人は第一学園の校門で待ち合わせしており、その後第二学園に行くことにしていた。
第二学園には入場開始時刻についた頃にもかかわらず人集りがすでにできており、普通ならば入るのに一苦労しただろう。
だが二人は同系列の第一学園の生徒であるため、一般客とは違う入り口から入ることができ、そのため並ぶことも殆どなかった。
(王立学園の生徒たちは事前に紙を渡されており、一般客とは別の出入り口を使うことができる。その他諸々も特典のようなものも存在する。)
「それで最初に騎士候補生がいる場所に行くのか」
「それでもいいけど、他のとこも回ってみない?」
「そうだな。適当に食べ歩こうか」
王立学園の学園祭のときには敷地内に学生以外の屋台も数多く存在する。
王都で有名な服屋や雑貨店、宝石店に飲食店。
その他の有名な店が学園に大量の資金を渡し、土地を確保して商業をしている。
なぜそこまでの大金を叩いてまで土地を確保しようとするかは至って簡単。
ここには王都中、世界中から人々が集まってくる。
そしてその人達の財布の紐は学園祭というイベントの効果で緩くなっており、稼げるから。
もう一つは学生の存在だ。
この学園に通えている時点で将来は大金持ちになるのは約束されたようなもので、そういった者たちに気に入られおくことは将来そのものたちが金を落としてくれる可能性が高い。
そういった2つの理由から有名店は大金を叩いてまでこの学園の土地を確保しようとするのだ。
二人は美味しそうなもの物を見つけたら買っては食べ、時間はどんどん立っていった。
「第二学園といえば、毎年恒例のこのイベント。
第二学園のモンスターの見世物。
第一、第三学園には
そのため民間のこういった見世物は入場料が高く、裕福な家でないと見ることはめったにない。
だが第二学園は入場料は無し、無料で見ることができるため、毎年人気の催しだ。
「
「だね。楽しそうだし」
二人は急いで受付に向かい、入場チケットをなんとか手に入れることができた。
中はすでに人がたくさんおり、椅子の殆どが埋まっている。
二人が入ってからすぐに催しは始まった。
色々なショーがあり、時間を忘れるほど楽しんでいると、終わりの時間はすぐにやってきた。
「それでは、これが最後の見世物です」
司会がそう言うと、奥から五匹のモンスターが入ってくる。
黒の毛と赤いたてがみが特徴的なヘルハウンドだ。
ランクはBで、普段は集団で生活をしており、攻撃は炎を吐いてたり、噛み付いたりしてくる厄介なモンスターだ。
学生の
ぶら下げられている輪に自分で火を付け、それを順番に通り抜けていく。
他にも技を決めていき、
そして、順調にショーが進んでいっていたときに事故が起こった。
突然ヘルハウンドたちが暴れ始めたのだ。
「あれ、ちょっと。言うこと聞いてよ」
学生の
指示を効かなくなったヘルハウンドのうち二匹は舞台にいた
「アリスは舞台を。俺は観客の奴をやる」
「わかった」
クリストフの指示を聞いたアリスは腰の剣を抜き、
クリストフも同じように三匹を倒した。
アリスは怪我をした学生の治療をしている。
「外が騒がしいな」
ここの騒ぎはすぐに終わったが、外から騒がしい音がする。
どうやら他の場所でも何かが起きているようだ。
「アリス。ここは任せた」
「あとは任せて。終わったら私も行くね」
アリスにここのことは任せ、クリストフは外に向かった。
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