最強のお嬢様


 明かされた衝撃過ぎる事実に、頭を抱えてのたうち回りそうになってしまった。

 これ、もしかしたら魔術属性が変質したのも、この辺が原因なのか……? と思うと、具合が悪くすらなってきた。


 何もかも俺が悪いんじゃん……。いや、これに限っては、あるいは良い方向ではあるのかもしれないんだけど……。

 てか、同調現象を起こしたって言っても、ほんの一瞬だろ……?


 これはもう、レア先輩に才能がありすぎる方が問題なんじゃないだろうか?


「こらっ、責任逃れしようとしないのー」

「くっ……返す言葉が無さすぎるッ!」


 根元の原因である自覚が生まれてしまった為、もうどうしようもない俺であった。

 最近、反論の余地がない状況に陥り過ぎてる気がするな……。


 俺、結構頑張ってるはずなんだけどなあ……。

 想定外のところで、想定外なことが起こり過ぎである。

 世界は俺に何か恨みでもあんのかよ────て、いうか。


(これ、負けられない理由が増えちゃったな……)


 控えめに言っても、《神焔》は《炎熱》より強力な魔術属性だ。分からないこと塗れではあるが、それは間違いない。

 仮に、事が上手く運ばず、レア先輩が黒帝に憑依され切ってしまった場合、手の付けられなさが段違いになってしまう。


 レア先輩と違って、黒帝の場合、魔装はもっと洗練されたものになっているのだろうし──レア先輩が、ここまで黒帝に影響を受けているということは、その逆もまた然りであるということなのだから。


 もしそうなってしまったら、絶対に死人が出る。間違いない。

 それは……純粋に困る……。

 だってそんなの、実質俺のせいみたいなもんじゃん……。


 まあ、誰も死なせない理由が重くなっただけではあるのだが、どうにも責任感が膨らんだような気がして、吐き気がしてくるというものであった。

 

「あはは、そう不安そうな顔しないでよ。何にせよ、レアちゃんが負けることは無いんだから」

「いや、まあ、そこは特に心配していませんが……」


 あれ、そうなの? と無垢な笑顔で首を傾げる月ヶ瀬先輩を見て、思考を切り替える。

 レア先輩の魔装は五分と保たないだろう──だが、それだけで充分すぎるのだ。

 少なくとも、あれに対抗するのなら『学園最強』も、『学園最優』も、開幕から奥の手を出さなければならなかった。


 そうしなかった時点で、決着は着いたも同然だ。

 一番実力のある彼女らでさえ、ほんの少しの時間も稼げないということが明白である以上、各寮対抗戦の初日は、赤の不死鳥寮うちの圧勝で決まりである。


 まあ、流石にレア先輩と言っても、ここから十人全員ボコすなんて真似は、体力や魔力の問題的に不可能だろうが、どうせ後には月ヶ瀬先輩が控えているのだ。

 盤石の態勢と言っても良い────だから、問題は明日以降である。


 レア先輩は、絶対にガス欠になる。あんなド派手に消費した魔力が、たった一日で回復するとは到底思えない。

 まあ、仮に回復したとしても、魔装を使うのは遠慮願いたいのだが……明日からは、本格的な集団戦になるはずだから。


 制御できていない以上、あれはただの無差別攻撃魔法である。敵諸共味方まで……! とか、たまったものではない。

 フレンドリーファイアとか一番関係性が悪くなるやつだし、見てて気分の良いものでも無いからな……。


 折角、今こうしてイメージアップしてるのに、それがまた元通りになったらもう取り返しはつかないだろう。

 ただでさえ、チームとしての練度や関係性を見ると、うちはまあまあ劣っているのである。


 やっぱり基本は先輩二人を中心に、一年組がカバーしていくのが理想なんだろうな。

 立華くんと、葛籠織のレベリングもしないとだし────とか、考えながら試合を見ていたら。


「おーほっほっほっほっほ! 圧勝!!! でございましたわ~~!」


 レア先輩は気合で十タテをした。

 マジでなんなん? あの人。

 あと、どう見てもその拳を突き上げるポーズはお嬢様っぽくないからやめた方が良いと思う。




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