第11話

「わらわは聖盾だぞ!!聖盾なんだぞ!?勇者にとって必要不可欠な力なのじゃ!うぬらのような弱小な存在よりも、よりもずっとずっとアヤトにとって重要人物なのじゃ!!すごい奴なのじゃ!どうだすごいだろう!」


 やけに自己主張の強い聖盾だなぁ。


「アヤトが気に入らないんでしょ?なら置いてくしかないって!大丈夫大丈夫、他の勇者が拾ってくれるでしょ!!」

「な、何を小娘ェ〜!!封印を解いたからにはきちんと最後まで責任を取れぃ!妾はどんな攻撃も防ぐ聖盾じゃぞ!」

「それじゃ邪神の攻撃も防げるのの??」

 わざと意地悪なことを言うと、熾天使の顔が見るからに歪んだ。

「ゔっ」

「それにこっちには聖なる(笑)巫女と聖処女と精霊王と暗黒少女と堕天使と黒鬼と旧支配者の魔神がいます。もう満員です。乗れませーん」

「なっ、何をいうんだ、テセラ!純白の熾天使、アルタリスはかの有名な熾天使様だぞ!?」

「そうじゃぞ、その通りじゃ!話がわかるでは無いか小僧!………やはり小僧、どこかであったことはあろうて?」


 リッドはまたギクッと固まった。


「えっ、イヤイヤ滅相もない!流石にここまで神格の高い方とはお会いしたことが無いので!」

「そうか?………はて、おかしいな…どこがで会おうた気がするのだがな………………まあ良い。そんなことよりも小娘!妾を連れて行かぬことは何事か!」

「いやです結構でーす」


 聖なる天使は悔しげに地団駄を踏んだ。


「よし、出ましょうか!」

「いやいや、なんでだよ。持っていこうぜ」

「いやいや、なんでなの。持ってかないぜ」


 そう言って私が笑いながら懐から拳銃を取り出して脅すと、リッドは黙って引き下がった。

 しかし肝心のアヤトは下がらなかった。


「いやいや、どうしてだよ。ずっと盾の中に閉じ込められていて、挙句に封印されてたんだろ?せっかく封印が解けたのに、置いていくなんて可哀想だろう」

「おお!さすが勇者殿。理解してくださるのか!妾、盾の中に長い間閉じ込められて、一人ぼっちでずっと寂しくて辛かった。悲しかった。それなのに皆が妾をいじめるなんて、妾悲しい!特にそこの機械娘!!貴様は妾の下僕のはずであったはずでろう!なぜ妾の味方をせんのだ!」

「深刻なエラーが発生致しました。ピピー、ガガガガ、セイギョフノウ。アナタハテキデス」

「嘘をつけェ!」


 そんな押し問答と内輪もめを繰り返していると、ユリが嘆息しながら私に囁いて来た。


「ねーテセラ、別に持って帰ってもいいんじゃないの?」

「実はこの聖盾は、かつて女神が愛を施した伝説の聖剣で、その力を狙うやからが地底から這い出てくるからダメ」

「………いつも思うんだけど、そういう発想どこから出てくるの?しかも毎回全部当たるのが謎すぎるよ。テセラって歩くbotなの?」

「そう思うならねユリ、常日頃からアヤトよいしょをやめてくれない?とにかくダメなものはダメなの。おうちに帰ろ、皆。遺跡内も風が通ってたし、他のとこから出られるでしょう」


 こんなところでこれ以上時間を潰したくもないので、私はさっさと元来た道へと舞われ気味をする。

 しかし踵を返した私の前に、いつのまにか見慣れた壁が道を阻んでた。入り口のように。


「……………えっ?」


 くっくっく、と喉を鳴らした低い笑いが聞こえてくる。

 先ほどまで懇願していた姿とは一変、髪を振り乱して俯いた白無垢の天使が、肩を揺らしながら不敵に笑みをこぼしていた。


「ぬかったな、小娘………残念ながらこの遺跡は妾が占拠した!妾を連れて行くまで、貴様らはここから一歩も出さぬ!最初からこうすればよかったのだ!あーっはっはっはっはっは!」


 こいつのどこが【白無垢】やねん!!

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