第9話
岩の巨人を倒した後。
私たち勇者一行は、さらに奥へと進んでいた。
「とりあえず出口。出口探そう。早く出口見つけてここから出よう。一刻も早くこの場所から脱出しましょう」
「お前さんどんだけここから出てェんだよ…」
「あ゛?リッドのくせに調子乗んな。殺すぞ」
「本音!本音が出てるっつーの!」
ショックで地面に沈み込み始めたリッドを掴んで引きずりながら、私は奥へ奥へと進む。
深淵に近づけば近づくほど、道はどんどん狭まり、深闇を宿し、陰鬱な空気を醸し出していた。
ーーーー不意にアヤトが顔を上げた。
幾つもの分岐した道の一番右を振り向くと、僅かに光の漏れてくる穴を見つめる。
その光量は、どう見ても外光によるものでは無かった。
「あそこ、なんか気になるな」
はい、アウト。
「ダメ」
「えっ、良いじゃんちょっとくらい」
「ぜっっっっっっっっっったいダメ」
「良いじゃんそれぐらい!先っぽだけ、先っちょだけだから!!」
「どうせ行ったら、今まで千年の眠りについてた聖なる天使とかの封印が解けるからダメ」
「なにそれ怖っ!?」
「貴様は黙れリッド。…それでもダメなもんはダメなの。ただでさえゴミ機械が一人増えたんだから、これ以上余計なものは背負えないんだけど!」
「ふふ、それは一体誰の事でしょうか。旦那様、この女消してもいいでしょうか」
「ええ、掛かって来なさい粗大ゴミ。一瞬で分解してスクラップにして廃品回収に出してあげる」
そう言ってシュッシュッとシャドウボクシングをしながら、ばちばちと視線の先で火花を散らしていたが、私はあることに気が付いてふっと顔を曇らせた。
「…………あれ、アヤトは?」
「あー、アヤト?アヤトなら、あの洞窟の奥行った!」
「あああああああああああやとあああああああああ!!」
* * *
アヤトが消えたという奥を光速で進むと、道が瓦礫によって塞がれていた。
どうやらアヤトがせめてもの私除けのために、小さい脳みそを振り絞って健気に工作したらしい。それをドロップキックで破壊する。
どうせ遺跡の封印は解けているのだ。鉄くらいの硬さなら私は簡単に蹴り砕ける。
ちなみに私の握力は片手で1トン近くあるが、魔法使いにはあまり必要の無い、役に立たないスキルだ。それは自分でもわかっているので、特に誰かに言及したこともない。
バラバラと降り注ぐ瓦礫の破片を払いのけ、私が洞窟の奥へと吶喊すると、アヤトはちょうど、白い鎖を何重にもガチガチに巻かれ、岩にくくりつけられたナニカに触ろうとしているところだった。
そう、ナニカに。
▶︎私はユリを繰り出した!
「いけ、ユリ!餌付けだ!」
「わかった!ダメだよアヤト、その鎖に触ったら!あめちゃんあげるから帰って来なさい!!」
▶︎アヤトはビクッと肩を揺らした!
「あ………あ…め…ちゃん………!」
▶︎アヤトはめっちゃ反応している!こいつ馬鹿なのか?生きてて恥ずかしくないのか?まあ昔からか。
「そうよ、ユリもこう言っているんだから帰って来なさいアヤト!」
「あ、テセラがそういうんだったら別にいっか!よし、岩の封印解くわ!」
「なんでそうなるー」
瞬間アヤトは白い鎖を手で引きちぎり、挙句にその残骸を地面に叩きつけて、その上で目から出した勇者ビームを浴びせ、さらにはこれでもかと言わんばかりに踏みにじりまくってめちゃくちゃにした。
もはや親の仇とかそういうレベルの仕打ちである。
刹那、辺りは眩い光に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます