#2 part4

「試合は五回の裏まで来ていますね。ここまで両先発共に2失点、そこそこの好投を見せています。ただうちとしては昨日勝利の方程式を使っちゃってるんでどーですかね、先発の宮内みやうち選手が6回まで投げてくれるとして、そのどっかで芝崎さんが投げるかもですよ。はい、そんな真面目な解説からやってまいりましたブルペンラジオ。メインパーソナリティーは僕、黒鵜座一とゲストはそこに座っている芝崎怜司選手で引き続き送っております。それではお便りを読んでまいりましょ、じゃあ芝崎さんが引いて僕が読む形でいきましょう。では早速ヒュイゴッ!」


 


 


 


 はい、じゃあこの中からお願いします! といつものように黒鵜座が取り出したるは白い箱。この中にリスナーたちの夢と希望(質問)が詰まっている。芝崎はそれに手をつっこんで、2枚ほど取り出した。


 


 


 


「すまん、二枚出てきた」


 


 


 


「おおっとこれは珍しいですね。……一応聞きますけど、わざとではないですよね?」


 


 


 


「当たり前だ」


 


 


 


 まぁこの人がそんな器用なことするわけも、わざわざ二枚取る理由もないか。変に構えるだけ損なんだろうな、多分警戒する僕が悪い、うん。首をかしげる芝崎を見て黒鵜座は肩を落とした。


 


 


 


「いいでしょう。片方だけ読まないというのも可哀想なので両方読んで行きましょうか。まず一通目ェ! え-、ペンネーム『弁当の中に入っている緑色でギザギザのアレ』さん。はーなるほどね、中々ユニークな名前が来ましたね。いやー僕はそれの名前分かりますよ。緑色のアレですよね? 心配しなくてもちゃーんと分かってますよ。まぁでも最初に言っちゃったらもったいないですよね、だからここはあえて? 芝崎さんに聞いてみましょう。芝崎さん、何て名前だと思います?」


 


 


 


「……食用緩衝材?」


 


 


 


 ※バランです。


 


 


 


「考えてた時間返してもらえます? あと何ですかその無駄にカッコいい名前。食べられないですよ? まさか芝崎さん食べたわけじゃないですよね? マジで子供が真似しかねないのでやめてくださいよ。えー正解はですね。グリーンベレーです」


 


 


 


 ※重ねて言いますが、バランです。


 


 


 


「はい、いつも通り話が脱線したところで本題に入っていきましょう。えー『黒鵜座選手、芝崎選手こんにちは』、どうもこんにちは。『いつも楽しく家族で試合を見ています!』、ありがたい事ですね。こういうファミリー層に人気があるのは大変喜ばしいことですよ。『そこで質問です。お二人の仲のいい選手を教えてください』。……とのことです。なるほど、仲の良い選手ですか。僕の場合は投手でいうとよくつるむのは禄郎、あっこれじゃだれか分からない人もいるかもですね。えー石清水選手ですね。彼はなんだかんだ言いながら結構人付き合いがいいというか、僕が多少無茶を言っても合わせてくれるんで必然的によく一緒にいる感じです。第一回の放送のゲストもまぁ彼が受けてくれなかったら誰も受けてくれなかったでしょうね」


 


 


 


 石清水禄郎。アンダースローから繰り出す変幻自在の投球で打者を惑わす火消し役。もっと彼のことを知りたければ第一回の放送をプレイバックしよう!


 


 


 


「それで野手で挙げるとするならやっぱり扇谷選手ですね。よくバッテリーを組む立場な以上、会話する機会も勝手に増えていくといいますか。それで自然と噛み合うようになっていって。やっぱりバッテリー間でのコミュニケーションは必要だとひしひしと感じますね。まぁちょっと顔が強面なんで勘違いされる方も多いかもしれないですけど、普通にいい人ですよ。あ、顔怖いは余計か。でも時々ご飯おごってくれるし、キャッチャーとしての実力は折り紙付きだし。で、芝崎さんはどうなんですか?」


 


 


 


 芝崎はあごひげに手を当て、しばらく考え込む姿勢を見せる。そういえばあんまり芝崎が特定の人と話しているのは見た事がないな、と黒鵜座は記憶していた。一人でいるのが好きそうではあるけれど。


 


 


 


「そうだな……強いていうなら外野手の李選手か」


 


 


 


「え、え―――……」


 


 


 


「何だその反応は」


 


 


 


「いやだって二人ともそんな話すタイプじゃないですよね? 何話すんですか、っていうかどこ行くんですか」


 


 


 


「話してみると意外とウマが合ってな。最近は激辛料理が有名な店によく行くんだ。韓国出身という事もあって結構そういうものに対しては厳しくてな。『これくらい、韓国ではジョウシキね』とか前言ってたぞ」


 


 


 


「その時は何食べたんですか」


 


 


 


「俺は回鍋肉で、李は確か……麻婆豆腐を食べていたな」


 


 


 


 出てきたのはまさかの中華料理―――。これには黒鵜座も苦笑い。


 


 


 


「アレですか、ツッコミ待ちなんですか?」


 


 


 


「? 何が?」


 


 


 


「今日の放送ではっきりしましたね。芝崎さんが結構なアホだって事が。これ放送して大丈夫ですか、今お茶の間であなたのアホさがさらされているんですけど。あーもういいや僕しーらね。次行きましょう。ペンネーム『恋のキューピッド』さん。一文だけ書かれてますね。えーなになに? 『彼女いるんですか?』、……随分下世話な自称天使が出てきましたね。いいの? 恐らくこれ今日最後の質問だよ? というか芝崎さん既婚者ですよ。あ、でも週刊誌とかに暴露されるくらいならいっそここで言っといた方がいいですよ。芝崎さん、何か一言!」


 


 


 


「心配せずともそんな事はない」


 


 


 


「良かったです変な事言わなくて。あ、僕は未婚というか相手いないというか募集中というか。何故かそういう人は寄ってこないんですよね、こんなにイケメンなのに。おかしいと思いませんか? 思わない? あっそう。言っておくと好きなタイプは週刊誌にリークとかしない人ですね。スキャンダルとか選手のイメージめっちゃ下がりますからね。でもそれはそれとして彼女は欲しいです。えー丁度いい所でですね、そろそろCMに入るそうです。もしかしたら僕もこのままブルペンに上がっちゃうかもです」

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