間章03 恋バナ②

「残念ながらいませんよ。てかそんなの分かるだろ。ず~っとTBやってんだから」


 久遠の問いかけに俺は何を当然のことをって感じだ。たまのオフだってログインしない日はないくらいにどハマりしてるし、いっつも一緒にやってる3人なら分かりそうなもんだけど。


「そりゃそうだけど、H4Y4T0が内緒にしてるだけかもしれないし」

「別にひた隠しにすることでもないだろ。出来たら言うけど、そんな暇ないっての」


 もうじき始まるプロリーグに向けて追い込みかけなきゃいけないこの大事な時期に、そんなことにかかずらってられるか。Setoみたいに付き合い長くて落ち着いてるならまだしも。


「まぁたしかにH4Y4T0ってゲーム脳だもんねぇ」

「悪かったな」

「別に拗ねなくてもいいじゃん。それに、顔も悪くないんだからモテたんじゃないの?」


 Setoにぐいぐい突っ込んでいったひよりは大人しくなって、今度は久遠がやけに来るな。


「そりゃ人並みにはいたんじゃないかとは思うけど、全然続かなかったというか」

「へぇ~、そうなんだ」

「別にひっきりなしとかそんなことないよ? 2回くらい付き合ったことはあるけどフラれたし」

「告白したの? されたの?」

「されたな」


 久遠に聞かれるがままに答えていく。Setoの奴、矛先が俺に向いたからそのままでいさせるために黙ってるな? 


「されたんだぁ。きっかけは何だったの?」

「TBだよ。リリースされて俺の通ってた高校でもバカ流行りしてて、俺が強いって話題になってさ。誘われてノンレとかやってるうちに気に入られたみたいで告られた」

「H4Y4T0は好きだったの?」

「ん~友人としては? って感じだったな。だからどっちも最初は断ったんだけど、付き合ってみてから好きになることもあるって言われてそれならって」

「へぇ~、女の子の方が積極的だったんだね」

「まぁH4Y4T0面倒見いいからねぇ~」


 レートはTierの差で出来なかったからノンレでたまに教えてたらそうなった。恋愛に全く興味がないってわけじゃなかったし、そこまで言われて断るのもなんか気が引けたし。


「なんで別れちゃったの? 喧嘩したとか?」

「いや~、別れたのもTBのせいというかなんというか」

「TBの? どういうこと?」

「え~あんま言いたくない」

「ここまで話しておあずけなんてそりゃあんまりだよ。何? まさか浮気でもしたの?」

「してないっての! …TBばっかりやってたからフラれたんだよ」

「「…あぁ~」」


 何納得みたいな声出してんだよ失礼な奴らめ。


「デートとかしなかったの?」 

「全くないってわけじゃないぞ? 映画見に行ったり授業終わってからゲーセン行ったりとかはしたし」

「誕生日とかは?」

「付き合ってる間はなかったな」

「クリスマスとかは?」

「…TBのイベントあったから別日でいいかって言ったらフラれた」

「「でしょ~ね!!」」


 久遠とひよりの声がきれいにハモった。Setoは笑いを必死で堪えてるんだろうけどちょいちょい聞こえてるからな?


「H4Y4T0最低!」

「さすがに同情の余地はないね」

「いやだって限定のスキンあったから欲しくてさ」

「最っ低!」

「これあれだよね? ぐう畜ってやつだよね?」

「いやでもさ、悪いとは思ったからちゃんと別日を… 」

「何が”ちゃんと”よ!」

「Setoの爪の垢を煎じて飲むべきだと思うよ」

「そんなに言わなくても…」


 2人からぼっこぼこに責められて二の句が継げない。だってTBやりたかったんだからしょうがないじゃんか!


「まぁH4Y4T0らしいけどね。TB中毒なのはお互い様だし、あんまり責めるのも可哀そうかな」

「そう! TBが面白いのが悪い!」

「開き直ってもどうにもなんないからね?」

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」

「やかましゃあ!」

「……ククク」


 Setoお前覚えとけよガチで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る