間章

間章01 公式グッズ販売開始

「はーい、みんな聞こえてるかな? 今日も配信始めるよ~」


 ひよりの元気な声で配信が始まる。今日は俺とSetoは枠を取らず、ひよりの配信に参加する形式だ。ひよりの配信画面の右端に俺たちの顔が映るようになっている。


「H4Y4T0達も今日はあたしのチャンネルに来てもらってるからね~」

「こんにちわ~」

「ども~」

「さて、今日はついにRising Leoの公式グッズ販売開始の日で~す!」

「いえ~い」

「よいしょ~」


 ひよりの新衣装配信から2週間くらい経ち、公式サイトのオープンとともに公式グッズの販売が今日から開始される。この配信はそのグッズのラインナップを紹介するための枠だった。


「すでに先行予約として公式サイトの方でチームユニフォームの受付は開始してたんだけど、ようやく他のグッズもお披露目できるようになりました~」

「結構ユニフォーム予約してくれてるんだよね?」

「そう! びっくりするよ! なんと3000枚も予約してくれてるの」

「うえぇ!? ガチ!?」

「すげぇな! そんなに予約してくれてたのかよ」


 ひよりの口にした予約枚数に俺とSetoは仰天してしまう。ひよりのリスナーが大半だろうけど、それにしてもありがたい限りだ。グッズの収益のうち、それなりの割合が俺たちの収入として還元されるから、予想だにしない反響でびっくりだ。あれそこそこいい値段したよな…シャツなら4000円で、上下セットなら8000円だっけ。


「3人ともそれぞれ男性用と女性用で用意したから6パターンあるし、これからももちろん販売するから今からでもぜひ興味のある人は買ってみてね。あたしたちもいつも練習のときは着てるし」


 俺もSetoもいつも練習するときはユニフォームを着て配信するようにしてる。俺たち自身が広告塔であり商品でもあるわけだしね。


「さて、それじゃあどんどん紹介していくよ~、まずはこれ! マウスパッドで~す! これはチームロゴが描かれてるのと、あたしたちのSDイラストが描かれたバージョンの2種類です。SDイラストのデザインは、あたしの生みの親のクロネママに担当してもらいました~!」


 俺たちの2頭身?のイラストが描かれたパステル調の色彩のマウスパッドで、見た時にすげぇ可愛らしいなと思った。俺がSRを持ってて、SetoがAR、ひよりがショットガンを持ってる。チーム名もゆるめのフォントが使われてて、女の子が買ってくれるのかなってイメージを持ってる。


「あたしはイラストのマウスパッド使ってるよ。2人は?」

「俺もクロネさんがデザインしてくれたからそっち使ってる」

「俺はシンプルなの好きだからロゴの方だな」


 俺とSetoがそれぞれマウスパッドを映して示す。FPSに対応した大き目のサイズで、滑りもしっかり考えられてて使い心地も抜群によかった。


「基本的にはどのグッズもこの2種類を用意してる感じなの。これからもデザインは追加していくから楽しみにしててね」


 コメントを覗くとSDイラストへの反響がやっぱり大きい。ひよりのデザインを担当しているクロネさんが俺たちも可愛らしいSDイラストを描いてくれてるから統一感があるし、実はチャンネルのアイコンもプレゼントしてくれた。早速今日から俺たちのアイコンはそれで統一してる。


 それからもひよりの進行でアクリルキーホルダー、マグカップ、シール、缶バッジ、シリコンバンドなどなどのラインナップが紹介されていった。ひよりがどれも明るく嬉しそうに紹介してくれるもんだから聞いてるこっちも楽しくなってくる。さすが配信者として先輩なだけあってすごく頼もしかった。


「さて、紹介はこんな感じかな。どれもすっごくよかったでしょ? みんな気になったのあったらぜひ買ってみてね! ほら、2人もみんなに何か言ってよ」

「そうだね。えっと、どれもすごくいい出来だと思うんで、ぜひ買って応援してください。俺のおすすめはマウスパッドかな。ほんと使用感いいんで」

「これを買って死ぬ気で練習すればフィジカル強くなるんでぜひ買ってください」

「それ練習のおかげでしょ!」

「練習は必要だろ」

「グッズを勧めろって言ってんのこの火力バカ!」


 いつものように喧嘩を始める2人を宥めながらグッズの紹介は終わった。後日、どのグッズも順調な売れ行きで、一部は追加生産になったりと想定を超えた注文になったりしたらしい。


 俺たちのためってのは当然なんだけど、応援してくれる人達が興奮するようなゲームを魅せてこそプロゲーマーだ。グッズを買ってまで応援してくれる人たちがいると思うと、今まで以上に練習に気合が入った。


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