第2章56 集合

 二日後、俺は茜さんからの招きでぶいあどの事務所に足を運んでいた。Rising Leoと結月 雫久が一堂に会することになんたんだ。


「おっす」

「おう、行こーぜ」


 事務所の最寄り駅でSetoと合流し、2人で他愛もない会話をしながら歩いているうちに到着した。


 以前使った会議室に通されると、既に他のみんなが集合していた。


「こんちは~」

「っす」

「お、2人とも遅刻せず来た。偉い偉い」

「おかんかお前は」

「あれ、H4Y4T0髪切ったんだ。似合ってるね」

「まぁな。おっ、そういう久遠もじゃん。やっぱその感じがしっくりくるな」

「あはは、そう? 僕もこっちだな~って思ったよ」

「こんにちは、H4Y4T0さん、Setoさん。こうしてお会いするのは日和の新衣装配信のとき依頼ですね」

「確かに、懐かしいなぁ。まぁずっと話してたから久しぶりって感じはしないけど」

 

 柊さんと朝顔さんとも軽く挨拶すると、2人はSetoに話しかけにいった。まだ悔しさは薄らいでいないはずだけど、みんな普通に振舞えるくらいには気持ちの整理がついたみたいだ。

  

 やがて、会議室の扉がノックされ、茜さんが入ってきた。


「こんにちは。皆さんお揃いですね」


 挨拶を交わして席に着く。長方形に並べられた机の奥側に久遠も含めたRising Leoが座り、手前側に白樺さん達3人が、真ん中に茜さんという配置だ。


「さて、まずは3人にですね。結、みぃ、しぃ、お疲れ様。結果は残念だったけれど、あなたたちの頑張りには本当に感動させてもらいました」

「ありがとうございます」

「ありがとね茜さん」

「ありがとうございます」

「プロばかりの環境で、あと一歩まで迫ったのは3人の努力と執念があったから。届かなかったけど、それは応援してくれた人達にはきっと伝わってるわ。だから、自分を責めるのではなく前を向いてね」


 優しく3人を労う茜さん。信頼する代表から掛けられた言葉に、3人は小さく笑顔を浮かべた。


「Sleeping Leoの皆さん、3人の指導をしてくださって本当にありがとうございました。特に久遠さんにはつきっきりでコーチングをしてもらいました。3人がここまで頑張り抜けたのは、皆さんのご協力が不可欠でした。改めてお礼を申し上げます」


 わざわざ立ってお辞儀をする茜さんに俺たちも慌てて席を立つ。


「こちらこそありがとうございました。3人の頑張る姿はとても刺激になりましたし、勉強になりました」

「凄いものを見せてもらいました。感謝してます」

「あたしはぶいあどなんだから協力して当然だから!」


 俺たちも感謝の言葉を返したあと、最後に控えていた久遠が茜さんの方へ歩いていった。


「茜さん、私にこんな貴重な機会を与えてくださって、本当に…本当にありがとうございました。それと、コーチとして3人を目標の舞台まで連れていけませんでした。申し訳ありません」

「久遠、やめt」

「結、待ってね」


 茜さんが白樺さんを制した。白樺さんだけじゃなく、2人も怒ったような、辛そうな表情を浮かべている。


「頭を上げてください、久遠さん。お気持ちは受け取りましたから」

「…はい」

「ゲームには参加していなかったかもしれませんが、このチームは久遠さんも含めて4人のチームなんだと見ていて強く感じました。結月 雫久、ぴったりな名前だと思います」

「そう思っていただけていたなら嬉しいです」

「はい。結たちも落ち着いてね。久遠さんは筋を通してくれているのだから」

「でも…」

「それだけコーチとして全身全霊で取り組んでくださったということよ。ゲームに参加していなくても、あなた達と同じだけ悔しがってくれるほどに」


 この場の誰もが分かっている。今回の結果は誰の責任でもない。強いて言えば4人全員で等分だろう。でもコーチとして、茜さんから頼まれたことを十分に果たせなかったと思うから久遠は謝罪した。それがさっき茜さんの言っていた”筋”なんだと思う。


「ただ、私からすれば久遠さんは十分に役目を果たしてくれましたよ?」

「そうでしょうか」

「はい。多分結たちと過ごすうちに書き換わったんじゃないですかね。私はあくまでコーチングをお願いしたまでで、プロリーグに連れて行ってくれとは頼んでいませんでしたし」

「……あっ!」


 久遠さんさぁ。

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