第2章51 最終戦開始

 第4ゲームが終了し、久遠はすぐに通話を抜けていった。この試合で4ポイント獲得して通算10ポイントになったけど、10位のチームが26ポイントなのでボーダーとの差は広がってしまった。


「Triumphしかないな」

「…そうだね」

「はっきりしていいじゃねぇか。負けたら終わりだ。勝つしかねぇよ」


 残り1試合で生き残るためにはもう勝つ以外に道はない。けど、可能性は閉ざされたわけじゃない。Setoの言う通り、やるべきことがはっきりしたと考えればいい。ミーティングを終えて久遠も戻ってきた。


「どうだった?」

「大丈夫、みんな全く諦めてない。勝つって約束してくれたよ」


 気合は十分と。それならいい。もともと厳しい戦いになるなんてわかり切ってたことだ。あとは今出せる全てを次の1戦に注ぎ込めばいい。


「俺らは勝ちを信じて応援しよう」

「みんな…頑張って」


 画面が遷移し飛行船が飛び立った。この一戦で全てが決まる。頑張れ。勝て。3人が降下を開始し、運命の最終戦が始まった。



 マップに降り立つとすぐさま散会して物資を集めていく。すると、すぐさまキルログが流れ、1チームが姿を消した。


「今落ちたのってどこだ?」

「えっと…Team µミューだね」

「えっ、それって11位じゃなかった?」


 ひよりの反応にさっきまでの順位表を見ると確かに11位だった。残念ながら最初に敗退が確定してしまったな。ここは昨年プロリーグ進出したチームで、予選突破確実って見られてたんだけどな。


「初動で被せたのは現状1位のチームだね」

「なるほどねぇ。今日の突破を決めたから最終予選で邪魔になりそうなとこを潰したのか」

「…厳しいね」


 ひよりは納得したみたいだな。それでいい。嫌に感じる人もいるかもしれないけど勝負の世界だ。


 今日の勝ちを既に決めたチームはさらに先を見据えて動ける。Team µの人達やファンの気持ちを考えればいたたまれないけど、それだけ今被せたとこがプロリーグへの執念を見せたってことだ。


「俺らにとってはラッキーだな。一番ポイント取ってほしくないとこが落ちた」

「そうだね。僕らに他のチームの心配してる余裕なんかないんだから」


 Setoの言う通り、うちにとっては僥倖だ。やることは変わらないけど、突破の可能性がほんのわずか上がったのは間違いない。


「安地は…寄ったぞ! 北側だ!」

「流れきてんぞ!」


 白樺さん達はまだ分からないだろうけど、神視点のマップには北側に寄った第2収縮の円が表示されている。これなら先入りできる。これまで下振れ引いた分最後の最後に収束したな。


 やがて白樺さん達も次の収縮円を把握いて移動を開始した。道中、設置されているギミックを読み込んでさらに次の安地も把握できた。


 第2収縮が終わる前に目当ての2階建ての建物に到着し、各階の入り口にステッキを設置。無事に拠点を作ることに成功した。


「一番良さそうなとこはすでに取られてたけど、それなら俺もこの家選ぶなぁ」

「うん、僕もいいとこ取ったと思う」

「あとはキルポ拾わねぇと」

「お願い…」


 第2収縮が終わって生き残ったのは15部隊。次の収縮にかけてかなり減るだろうし、介入のチャンスもありそうだ。


 そこからしばらく人数が減らないまま時間が過ぎ、再びダメージエリアが広がり始めた。狭まる安地に追い立てられるように各地で銃声が起こる。


 白樺さんが屋内からスキルで状況を俯瞰し、屋根に上った柊さんと朝顔さんに情報を送る。三角屋根で射線を限定しつつ戦闘に介入しようとしてるな。拠点のほど近い丘の上で3チームが戦闘を行ってる。


「撃ちまくれ!こっちに構う余裕ないから!」


 朝顔さんがSRで狙い撃ちし、2人ノックダウンさせた。柊さんがダウンした相手の確殺をとってまず2ポイント獲得。


「ナイス!」

「よしよしよし!」


 さらに追撃を加えようとしたところで別方向から銃撃されたので、柊さんがすぐさま結界を張って室内へと戻っていった。


 ただ、ここで拠点の建物内にスティッキーが投げ込まれる。セイメイの結界を使ったのを見て、近くの岩陰に張り付いていたチームが詰めてきたんだ。


 次の収縮で確実に詰むポジションにいたから多少強引に詰めてきたな。3人はすぐさま2階から降りて爆発を避ける。そこにロビンフッドのODも発動してバリアが剥がされた。


 一気に入口からなだれ込もうとしてくるけど、3人健在の状況ならそうそう崩れないぞ。まず毒ガスが噴霧されて視界を奪うと同時にダメージが入る。フォーカスを合わせて相手のゴクウを倒した。


 相手が結界を張ってインファイトを仕掛けるけど、全員リダイレクトを駆使しながら数的有利を活かしてセイメイもダウン。


 残ったマーリンが離脱しようとしたけど、最後は朝顔さんが詰め切った。


「漁夫警戒して!」


 久遠の言葉が届いているかのように、朝顔さんはすぐにステッキを再設置して柊さんはODをいつでも発動できる態勢で待機してる。幸い他に詰めてくるチームはなく、3人は敵のボックスを漁って物資を補給することに成功した。


残り9部隊、現在キルポイント5。

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