第2章47 初戦

 ついに始まった。3人は先ほど勝ち取ったランドマークに一直線に降下して物資を漁り始める。マップをすっぽりと覆うように第1収縮が表示されたタイミングで白樺さんがギミックに向かった。


 俺も視点を切り替えてマップを拡大する。神視点を見れる人は常に1つ先の安置が表示された状態でゲームを観戦できる。黄色の円で表示される第2収縮は…


「お、寄ったじゃん」

「持ってるねぇ~」


 黄色の円は南西側に寄った。3人のランドマークも全域が入ってる。


「H4Y4T0、これからの収縮はどうなりそう?」

「多分このまま動かなくても第4収縮くらいまでは安置内じゃないかな。ギミックはアプデで何回も使えるように修正入ったし、このまま籠ってるだけで中位は固いと思う」


 その後はロビンフッドで周囲を警戒しながら近くのエリアまで漁る範囲を広げて物資を整えた。さっきの練習試合でランドマークを取れなかったチームが再度初動ファイトで2つくらい減ったけど、そこからは静かな展開だな。どこも落ちたくないからファイトが起きにくい。


 マップを見れば18チーム、50人以上のプレイヤーが全域で動き回ってる。北側のチームはすでに移動を始めてるとこもあるな。


「久遠、改めてこのチームのコンセプトを説明してもらえる?」

「うん、ロビンフッドで安置を読んで建物を確保、そこからモリアーティとセイメイで守って平均順位を安定させようってコンセプトだね」

「アベレージを上げてくってわけね」

「そうだね。キルポイントは拾えるものを拾っていくけど、とにかく順位を意識するように教えたかな」

「たしかに、キルムーブはさすがに厳しいもんな」


 視聴者にも説明をしていきながら観戦は進んでいく。3人は洞窟を拠点にしてしばらく動く様子はない。動くとしても次の収縮を読んでからだな。


 大会が始まるということでシーズン途中ながら若干のアプデが入って、ギミックが再利用可能になったのは本当にでかい。これのお陰で白樺さんの負担をかなり減らせることになった。


 ”盗賊の根倉”は入口が2つあるけど、どちらもすでに朝顔さんがステッキを設置ずみ。むやみに入ってくれば毒ガスの餌食だ。


「お、やっぱ次の収縮も入ったな」

「うん、ていうかこれ多分最終も近いよね」

「こりゃキルポもそこそこ拾えるかもなぁ」


 俺と久遠の読みだと多分最終安置に洞窟の入り口が少しかかるくらいになる。ということは、


「最終安置に近い出入口を使いたいから、その反対側を死守だな」

「うん、そうだね」


 背中を突かれるわけにはいかない。切るべき方向ははっきりしたな。あとは白樺さんがそれに気づけるかだけど。


「いいね。雫にステッキを追加させたし、全員切りたい方向に寄ってる」

「マップ見てもそっち側に敵増えてきたしね」


 第2収縮が終わってマップの1/3がダメージエリアに変わった。残り14部隊まで減ってチームが密集してくる。


「狙ってるな」

「だな。まぁこの安置で洞窟取れりゃ5位には入るだろうし」

「弾かないとね」


 3人が守る側の入り口目掛けて1チームが詰めてきた。マーリンのODを使って動きを制限しようとする。けど、


「それは雑すぎかな」


 3人は落ち着いて鎖の根本のトーテムをすぐさま破壊。これで鎖は掻き消えた。相手は無駄に

ODを切っただけ。セイメイのODも洞窟に籠ってれば何も怖くない。


 安置の収縮が始まり、先ほどのチームが無理やり突っ込んできた。グレやスティッキーを投げ込んでくる。3人は落ち着いて引いてポジションを下げた。


「入ってこられちゃうよ?」

「大丈夫。そのためのガスだ」


 入口を簡単に明け渡したのはガスがあるから。見えにくいとこに設置してたステッキから毒ガスが吐き出される。煙幕にもなるから相手は視界も奪われた。


「詰めて!」


 久遠が声を上げるのとほぼ同時、下がっていた3人が一気に前に戻ってインファイトを仕掛けた。モリアーティのパッシブ効果で3人は煙のなかでも敵を視認できる。


 相手はようやく引こうとするけど時すでに遅し。丁寧なフォーカスであっという間にセイメイが落とされ、続いて残る2人も倒された。


「だから美月は結界使わなかったんだ」

「そういうこと。視界を奪いつつスリップダメージを与えたいからわざと引き込ませたんだね」


 すでに朝顔さんは再度ステッキを設置して漁夫の警戒もバッチリ。プロリーグ予選最初のファイトを3人は無事に乗り切った。

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