第2章45 プロリーグ予選、開幕
H4Y4T0視点
ついにプロリーグ予選開幕の日がやってきた。参加エントリーが締め切られ、公式で発表されたアジアの参加総数は前年から2割増加した約8400チーム。他の大陸を合わせると約3万チームがエントリーするとんでもない大会となった。リザーブも含めれば約10万人がこの大会にエントリーしたことになる。
大会に参加すれば限定の武器・キャラのスキンがもらえるし、参加賞として称号がもらえる。勝ち残れば勝ち残っただけ報酬も豪華になるので、それ目当てだったり思い出作りに参加する人達が大勢いるんだよね。
ここからアジアのプロリーグ予選は2週間でチームを40チームまで絞る。8400→5120→2560→1280→640→320→160→80→40チームと絞って最後に最終予選が待っている。最初のラウンドのみ勝ち上がるチーム数が入った組合せによって変わる。これに一部批判の声が上がってたけど、厳密に同数にできない以上初戦で若干の差が出るのはしょうがない。てか初戦くらい余裕で勝ち上がる気概を見せてくれよ。
基本的なレギュレーションは以下の通りとなる。
ゲーム数:各ラウンド5試合(最初にランドマーク争いのためにポイントに関係のない1試合が追加)
勝ち上がり条件:各ラウンド上位10チーム(第1ラウンドのみ12~13チーム)
順位ポイント
Triumph:12ポイント
2位:9ポイント
3位:7ポイント
4位:5ポイント
5位:4ポイント
6・7位:3ポイント
8~10位:2ポイント
11~15位:1ポイント
16~20位:0ポイント
キルポイント
1キル:1ポイント
順位とキルポイントについてはRagnarok Cupと同じ。というかこっちが本家本元だしね。それと当然ながらキルポ制限もない。キルすればするだけポイントを積めるから、フィジカルに自信のあるチームはキルムーブを取ってくるはずだ。
さて、予選に参加しない俺たちは何をしているかというと、今回ぶいあどから参加するチームの応援配信ということで枠を取っている。久遠は自分のチャンネル持ってないし、3人の試合中はこっちに交じって観戦することにしていた。今は向こうの通話で最後のミーティングをやってる。
俺たちがこうした枠を取ったのは、もちろん俺たちも指導した3人を応援したいってのが大前提だけど、試合の流れを解説してほしいと茜さんからお願いされたってのもある。
3人を応援してるけどTBにそんなに詳しくない人もいるだろうから、そういう人は俺たちの配信も覗いてみてねってことらしい。とりあえず配信初めて最初にレギュレーションの説明を済ませて、概要欄にも簡単な説明は貼っておいた。
「ついに始まったなぁ」
「な。3人今頃緊張してんのかなぁ」
「あたし胃が痛い…」
俺とSetoはワクワクを抑えきれなくて、ひよりは3人の気持ちを案ずるあまり自分がダメージを食らってる。大会の始まる直前の緊張感ってやつだな。
そうそう、今回エントリーするにあたって、チーム名も提出しないといけないんだけど、3人のチーム名は”
「それにしてもみんな強くなったよなぁ」
「あぁ、パンデモ帯にしっかり残ってるしなぁ」
「すごいよねぇ」
総合力が高くないとパンデモ帯では生き残ることはできない。個人としてだけじゃなく、チームとしての練度が高いからこそ、最上位帯で生き残れるんだ。
「あと10分後か」
「さ~て、どうなるか」
「あたし、トイレ行ってくる」
あいつRagnarok Cupの時より緊張してないか? まぁそんだけ勝ってほしいって願ってるってことだよな。久遠は今頃3人に何て声をかけてるんだろうな。
久遠視点
「みんな、リラックスだよ。しっかり深呼吸して、気持ちを落ち着けるんだ」
僕の呼びかけに全員無言で応じる。全く緊張するなってのは無理な話。でも、少しでも冷静に初戦に入らせてあげたい。
「聞いて。今日までみんな本当によく頑張った。みんなが一切手を抜かないで、真剣に取り組んできたのは僕もH4Y4T0達も分かってる。きっと君たちの視聴者さん達もね」
3人はひたすら僕の言葉に耳を傾けている。集中が極限状態に達しているんだろうね。
「3人の連携は既に相当高いレベルに達してる。この構成に限りだけど、その分この構成ならプロ相手でも十分に可能性がある。自信を持って。結月 雫久は強い。君たちなら勝てる」
「うん」
「絶対勝つよ」
「頑張ります」
「よし、じゃあまずはポイントに関係ないランドマーク争いだから、そこでしっかり声を出し合って大会に入ってね」
「わかった」
「しゃ~行くぞぉ~!」
「お、お~!」
間もなくコーチやリザーブメンバー通話から抜けないといけない。ゲーム内のチームVCに切り替わる直前、
「コーチ」
「ん?」
結が僕を呼び止める。何か伝え忘れたことがあったかな。
「見ててね。一緒に戦ってね」
…何当たり前のこと言ってるのさ。君たちが譲らなかったくせに。今更仲間外れにされたらさすがに僕泣いちゃうよ?
「もちろんだよ。結月 雫久は4人のチームなんだから」
「うん。それじゃ、行ってきます!」
「「行ってきます!」」
「行ってらっしゃい」
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