第2章41 始動
その日の夜、今日も配信でコーチングを始める。すでにみんな公式の発表は確認してるし、構成の概要も伝えたけど、改めて視聴者の人たちにも伝えることになった。
「みんなもう見たかもだけど、今日公式から発表があったね」
「ね~、うちらは早速エントリーしたけど、さっき見たらもう2000チーム超えてたね。2週間後までにどれだけ増えるのやら」
「去年より増えそうですよね」
「うん、ユーザーも増えてるしすごいことになりそうだね」
「コーチ、構成についてもみんなに伝えてもらっていい?」
「うん、構成は結がロビンフッド、美月がセイメイ、雫にモリアーティを使ってもらおうと思ってる。アグラバードは建物が多いから、室内戦闘を強くできる構成にしたよ」
「私、モリアーティほとんど使ったことなくて、最初のうちはトロールしちゃうかも…」
雫は僕から構成を伝えられてから不安げにしてる。慣れてないキャラを大会で使えっていきなり言われたらそりゃ不安にもなっちゃうよね。
「大丈夫。モリアーティは僕の得意キャラだから。しっかり教えるから安心してね。それに、練習のときにどれだけトロールしたって気にしないでいい。どんどん失敗して上手くなろう」
「う、うん。頑張ります」
「うちがセイメイかぁ。Ragnarok Cupから使ってるし、もっと慣れなきゃなぁ」
「コーチはさっき室内戦闘を強くするって言ってたけど、屋外だと弱いの?」
「そんなことないよ。モリアーティって盤面制圧力めちゃくちゃ高いからね。なんなら僕は前衛として使ってたよ」
ガスで室内に籠るイメージが先行しがちだけど、モリアーティは使いこなせればチームのなかで一番前を張った動きが可能だ。雫にはそういった立ち回りを徹底的に叩き込むつもり。
「Rising Leoとのファイト練習が終わったら今日は個別にキャラの練度について磨いていってもらうね。雫にモリアーティの動きを教えるから、ちょっと2人は個人練習になっちゃうかな」
「分かった。私もロビンフッドのスキル回しとか安地読みの勉強しておくね」
「うちもH4Y4T0さんと楠のコーチング動画見直そ~」
ぶいあどがスポンサーについたことでH4Y4T0の配信アーカイブを編集した動画が作成されてるんだっけ。
「じゃあH4Y4T0達来たら早速初めていこう」
「「「おぉ~!」」」
ファイト練習のあと、雫とマンツーマンでモリアーティの動きの指導をした。特に肝になるのはスキル回しだ。モリアーティのスキルは煙幕兼毒ガスを噴霧するステッキを設置できるスキル。これは足元だけじゃなくてセイメイが結界を張れるのとほとんど同じくらいの距離まで投げることができる。
これを設置しておくことで、もし前を張って敵とのダメージトレードで負けた時に、ガスを撒けば相手は詰めて来られずに引くことが出来るんだよね。雫はところどころメモを取りながら、質問をしながら熱心に僕の話を聞いている。
個人練習にしたから3人ともすでに配信は終わってるけど、誰も練習を辞める気配はない。マンツーマンで教えてる雫はもちろんだし、美月や結からもチャットで質問とかが飛んでくる。少なくとも、練習量はプロにも全く引けを取ってない。上回らないといけないけど、そこは尖らせることでカバーする。キャラはもうここから動かすつもりはないからね。
この編成にする利点は室内戦闘が強い以外にも結の負担を軽くできるのが大きい。ロビンフッドは安地を先読みするギミックが使えるから、結がIGLをする上での安地読みの勉強の負担を軽減できる。
あとは本番までにどれだけ仕上げられるか。みんな、大変だろうけど頑張ってね。
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