第2章40 構成決定

 二日後、ついにプロリーグ予選の詳細が公式から発表された。参加申し込みが2週間後までで、1ヶ月後に始まる。2週間で一気にチームを絞りに絞り、最後の40チームに残ったら1ヶ月かけてプロリーグ参加チームを決める。日程については大体把握していた通りなので驚きは特にない。


 マップは”アグラバード”になったかぁ。ここは千夜一夜物語の世界観をモチーフにしていて、アラビア風の建築物が立ち並んでいる。また、時間経過で日が落ちて夜になるのが特徴で、ゲーム開始直後は明るいんだけど、終盤になるにつれて陽が落ちて暗くなるんだよね。視認性が悪くなるからPCのスペック差も出てくるっていうのが批判を受けていたりする。僕結構好きなマップなんだけどなぁ。


 それに、好みを抜いてもアグラバードはかなりいい部類だね。建物が多めのマップだから籠る戦略を取りやすいし。まぁ他のチームでも同じような戦略を取るところは多いだろうけど。


 早速僕はH4Y4T0に連絡を取って通話を繋いだ。


「もしもし、お疲れH4Y4T0」

「うい~おつかれぇ」

「あれ、寝起きかな?」

「ちょっと休憩して昼寝してた。ちょうど起きたとこだったから大丈夫だよ。公式の情報見てた」

「そっか、それなら話が早い。マップはアグラバードになったね」

「な。籠りやすい建物多いからよかったな」

「そうだね。だから構成について相談したくて」


 建物が多くて籠りやすいマップ。これなら結達にも可能性が広がる。H4Y4T0もはやくちゃんと目を覚ましてよ。一緒に考えてほしいのに。


「ちょい待って、顔洗ってくる」

「もう、早くしてよ」

「悪い悪い、すぐ戻るから」


 1分ほどで戻ってきたH4Y4T0の声は普段のものになっていた。


「お待たせ。構成だよな。ん~、アグラバードなら久遠の得意キャラいけんじゃない?」

「やっぱりそう思う? 僕もそれがいいかなと思ってたからよかったぁ」

「モリアーティを使えばそう簡単に籠ってる中に詰めてこようとはしないだろうしな」


 僕がTBの英霊の中で一番好きで得意なのがモリアーティだ。このキャラを一言で表すなら毒ガスだね。伸縮自在のステッキを地面や壁面に突き刺すと、そこから煙幕にもなる毒ガスが噴射される。この毒ガスの範囲内に入るとスリップダメージが入るから、建物の中で発動させれば相手は迂闊に入ってこられない。室内戦闘で特に真価を発揮する英霊と言えるね。


「室内戦闘に振り切るかどうするかなんだけど」

「ん~どっちもありだなぁ。まぁでも、モリアーティだけでも室内戦闘はかなり強くなるから十分な気はする」

「確かに。モリアーティがいれば十分かぁ。あと、出来る限り盤面の把握をしたいからロビンフッドは必須かなと思ってる。籠るなら特に周囲の状況分かりにくくなるから」

「俺も同意見だな」


 室内にいるとどうしても周囲の確認を出来る場所が窓や扉からだけになるから籠る場所によっては周囲の状況を確認できない。それを解決するうえでロビンフッドのスキルはかなりうってつけだから是非とも採用しておきたいなと思ってた。


「残る1体をどれにするかで悩んでるんだよねぇ。無難にいくならセイメイが強いよね」

「まぁどんな構成に入れても強いからセイメイ環境になってんだしなぁ」

「室内から移動するときのことを考えたらゴクウかアヌビスも捨てがたいから迷ってるんだぁ。ただ、こっちにするとファイト面が弱すぎるかなぁって」

「それ思った。戦闘向けのODがほぼないから3人には重いんじゃない?」

「だよね。モリアーティ、セイメイ、ロビンフッド。これがいいかな」

「いいじゃん。結界と毒ガスで室内戦闘は多分相当強いぞ。ランドマークと安地の寄り次第である気がするし。コンセプトにも合致しててすごくいい」


 僕が考えていた構成にH4Y4T0も同意を示してくれたことでほっと安心した。


「あとは誰に任せるかだけど、ロビンフッドは結で確定で、モリアーティとセイメイを美月と雫にって感じかなぁ」

「賛成で~す。Ragnarok Cupでは柊さんがセイメイ使ってたし、慣れはあると思うよ」

「あ、そうなんだ。なら決まりだね。モリアーティは雫に任せようっと」

「朝顔さんがモリアーティかぁ。雰囲気と全然合わないな」

「何? 僕だとぴったりだっていうのかな?」

「ははは、まっさか~」

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