第2章39
久遠視点
コーチングを初めてもうじき1週間。3人とはすっかり打ち解けて仲良くやれている。みんなすごくやる気があって練習も一切手を抜かない。日に日に実力が上っていってるのが分かる。
美月も雫もリダイレクトはマスターできたので、結も含めて挙動中のエイム向上に努めてもらっていた。
こればっかりは僕に出来るのはコツとかを教えるくらいで、あとはひたすら反復練習で地道にコツコツ積み上げていくしかない。レートにも潜らず、黙々と訓練場でbot相手にやるしかないから習慣になるまではかなりしんどい。でも、3人はよくやってる。どうしてって聞いたらこう返ってきた。ひよりに負けたくないと。
ひよりがやれたことを、自分達が出来ないはずがない。ひよりが手を抜かなかったことを、自分達が抜いていいはずがない。それがあの子達のモチベーションとなって突き動かしてる。
ファイトの合同練習でもみんなひよりに今日こそ勝ってやるって全力でぶつかっては跳ね返されてる。先日ひよりはとうとうパンデモになった。すでに2000位付近まで上がってたみたいだから、このままレートを回し続ければ危なげなくTierを維持したまま終わるはずだ。
それを見て一段とみんなのやる気が上がってる。縮めても縮めても、ひよりも強くなるからなかなかその差は詰まらない。でも、それはつまり3人も広げらないくらい強くなってるってことだからね。もどかしいだろうけど、着実に力は上がっていってる。
身近にライバルがいるってやっぱいいよね。僕もそうだった。火力ではSeto、IGLとしてはH4Y4T0っている最高の相手がいたから。
今3人はダイヤ帯に潜ってる。僕は3人の視点を画面共有で見ながら、問題点や修正が必要な個所をピックアップしている。構成については公式からの正式発表が2日後だからそこから固めることにして、とにかく先入りで安全に立ち回る意識を徹底するようにお願いしてる。それまではRagnarok CupでH4Y4T0達が採用したパーティでやってもらうことにしていた。
残り6部隊のところで壊滅してしまい、3人が戻ってくる。
「お疲れ。惜しかったね」
「あ~悔しい~、あとちょっとで勝てたのに~」
美月が言う通り、お互いラスト1人の状況で競り負けてしまったからね。
「さて、じゃあ反省会していくよ」
「「「は~い」」」
「まず、みんなノックダウン取られたときに謝るの癖みたいになってるからやめよっか」
3人のマッチをここ数日見てきて気になってたのがこれだ。まだチームを組んで間もないからかもと思って置いてたけど、数日経っても変わらないから多分無意識に習慣づいてしまってる。
「特にさっきのマッチ、最後1人欠けのチームに背後取られて雫がノックダウン取られたよね? 結と美月は前に意識を割いてたから対応が遅れて不利になってた。ノックダウンを取られてまずするのは謝ることじゃなくて、敵の位置を味方に伝えることだよ」
「うぅ、ごめんなさい」
「雫に限らず2人も見ててよくあるから、これはみんなで意識して変えていってね。細かいことだけど、さっきみたいな展開がプロリーグ予選で起きることだって十分考えられるし」
「確かに、私も何でか分からないけど謝ってる気がする」
「うちもだぁ~。なんか謝っちゃうなぁ。ほんと無意識だから気を付けないと」
「うん。本番までに無くなってればいいからね」
細かいところだけど疎かにしていいところじゃない。意識づけ一つで改善出来ることは徹底的に潰していく。こういったところで結果を分けちゃうと悔やんでも悔やみきれないしね。
「2人は報告をどんどん結に届けてあげてね。今のところ結がロビンフッド使ってるから位置の把握は出来るけど、どうなるか分からないから」
「は~い」
「分かりました」
「結はどうだった? こんな情報が欲しいとか、動きで難しかったとことかある?」
「えっと、報告はコーチの言う通りさっきのゲームはすごくもらってたと思うんだけど、最後ロビンフッドで見てたと思ったのにどうして見落としちゃったんだろう」
「あぁ、あれは安地外から来たんだと思うよ。崖で切れてたけど、距離的に間に合うからハイド気味に回ってきたんだと思う」
「そっかぁ。私たちが一番際にいたからもう背後にはいないと思いこんじゃった」
「安地ダメージも頭に入れとかないといけないね」
「確かに…これも覚えておかないと」
美月がちょっと疲弊してきてる気がするなぁ。IGLは一番精神的にクる役割だからなぁ。性格的にもH4Y4T0みたいな強烈なキャプテンシーてよりは協調しながら進む感じだし、結に合ったIGLの形を早めに作り上げないと。
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