第2章37 到達
「ひよりグレ! 左塞いで」
「はい! ステ(ィッキー)投げた」
「ナイス。反対から出てくるよ」
「一人やった。ラスト激ロー!」
「詰める!」
対面していた一人欠けのチームを倒しきる。残りは5部隊。
時刻は日付が変わって少し経ったくらい。レートに潜り続けてついにひよりのボーダーとのポイント差が100を切った。すでにSetoは一足早くパンデモに到達してる。全員状況を理解していて、今日一番の集中状態に入っていた。
他の箇所で戦闘が起きて残り4部隊。そこに漁夫が詰めていった。
「あたしたちも詰める?」
「まだ待つ。ヘイトを買わないよ。絶対撃たないで」
キルポはすでに十分あるし、潰し合ってくれてるんだからわざわざ乱戦に加わる必要もない。戦闘しないという選択を適切に取れるかというのも重要だ。最終盤にスキルやODを取っておければそれだけ勝率も上がるし、こういった小さな積み重ねが差を生むんだ。
やがて漁夫部隊の戦闘も終わって残り3部隊。動かない選択で勝手に2つも順位が上がってくれた。今しがた漁夫を成功させた部隊は一人がノックダウン状態。俺たちともう一つのチームと三角形を描くように位置している。なら、分かるよね? 仲良くしようね?
「射線広げる。挟むよ」
俺のコールで一斉に動き出す。無理に接近はせず、遮蔽の裏に隠れながらの移動で確保するエリアを広げた。俺は後詰めとして一応反対側のチームがこっちに詰めてこないか警戒する。
けど、ちゃんとわかってくれてるみたいだ。向こうも俺たちと同じようにまずは疲弊したところを狙うべく動きだしている。
敵の敵は味方ってことだね。チーミングではないから勘違いしないように。順位を伸ばすための最善が一致しただけだ。下のレート帯だとかみ合わないことが多いけど、パンデモ帯だと相手も分かってるのが多いから結構こういったことが起きる。
ちゃんと展開が読めるからこそ、一時的に共闘することもあるってことだね。
「スキルはいらない。どっちかの射線が通るからそれだけで落とせる」
挟まれたチームはなんとか回復を試みるけど、どちらかの射線を切るともう一方の射線が通ってしまう。2チームからのクロスに抗えるはずもなく、あえなく全滅した。
「これいったんじゃね?」
「ホント!?」
「多分ね。でもせっかくだし、勝って終わろう」
「しゃあ!」
相手の構成はロビンフッド、セイメイ、ゴクウか。どっかで見たなぁ。てか最近レートにロビンフッド増えた気がする。やると気持ちいいけどやられると鬱陶しいんだよなぁあのOD。
「ひより、タイミングね」
「分かった」
「グレでセイメイの結界使わせよう、それで多分いける」
俺のオーダーに従って全員で一斉にグレやらスティッキーを投げまくる。俺とSetoは温存する必要ないしね。相手は当然結界でそれを防ぐ。
結界が切れると手番が移って相手が仕掛けてきた。セイメイのODを切って頭上から爆撃が降り注ぐ。こちらも俺がセイメイで結界を張ってそれを防ぐけど、相手はさらにロビンフッドのODを切って結界を吹き飛ばそうとしてきた。
「見え見えなんだよ!」
ロビンフッドのODが発動する直前に俺が敵のシルフィを打ち落とす。上空から狙ったのは失敗だったな。”霊鳥爆散”はシルフィが打ち落とされてしまえば発動できない。出来るだけ射線を切れるところからじゃないとこうしてスカるんだよ。多分まだ使い慣れてなくて練習中ってとこなんだろうな。
俺たちは結界の中で爆撃を防ぎきる。相手はすでにODを2つ不発させた。盤面はこっちに傾いてる。
ただ敵もさすがは最上位勢。爆撃が終わるか終わらないかのタイミングで一気に詰めてインファイトを仕掛けてきた。これだと爆撃を撃ったらこっちも食らうからセイメイのODは迂闊に使えない。
俺とSetoは遮蔽から飛び出してファイトに応じる。すると相手の背後から地を這う鎖が伸び、3人纏めて雁字搦めに拘束した。
同時に俺たちが飛び出した遮蔽で爆発が起きる。タイミングばっちりだな。
「ナイス!」
「完璧じゃねぇか!」
「いえ~い」
俺とSetoが遮蔽から飛び出して注意を引きつけ、同時にひよりは上空へグレを投げる。マーリンのキャスリングで後ろを取って、そのままOD”地縛の魔鎖”って流れだ。
セイメイの結界が邪魔だから先にグレ投げて使わせたのもこのため。身動きが取れない相手とクロスを組んだ俺たち。どちらが勝つかは明白だった。
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