第2章35 正式発表
そして3日後、KERBEROSから公式に久遠のチーム離脱が発表された。同じタイミングで久遠もSNSでFAとなったことと、ぶいあどのプロリーグ予選に参加するチームのコーチに就任したことを報告した。
プロリーグ予選前の選手の移籍や離脱が最も激しいタイミングだったこともあり、加入からわずか数か月での離脱になったけど今のところ大きな騒ぎは起きていない。ひとまずこれで久遠のKERBEROSとの関係はきれいさっぱりなくなったわけだ。お互いに円満な話し合いの結果という報告の仕方だしね。
というわけで今日から白樺さん達の配信に久遠が登場する。これまで俺たちが一緒に練習しながら配信を何度かやっていたので、そこに久遠を混ぜる形で登場させることにした。
「大丈夫かなぁ…視聴者の人達に受け入れてもらえるかなぁ」
配信開始が近づいてきて久遠が不安そうにしていた。KERBEROSにいた頃もほとんど配信してなかったから、通話で参加するだけなのにすごく緊張してる。
「だいじょぶだいじょぶ! うちらもちゃんとフォローするし、変なこと言う奴いたらモデレーターに片っ端から消してもらうから」
「うん、いい人たちだからきっと大丈夫です」
「H4Y4T0さん達もいるし心配いらないよ。ほら、深呼吸してリラックスしよ」
「うん。みんなありがとう」
こと配信に関しては3人の方が大先輩だから頼もしく感じるだろうな。この3日間で4人はさらに打ち解けたのかやり取りが格段に砕けたものになっていた。
「何も心配することねぇよ。実力はあるんだ。堂々としてりゃそのうち勝手に認められるさ」
「そーいうこと。頑張れよ、コーチ」
「久遠なら大丈夫だよ」
「ありがとう。僕、頑張るよ」
そこからは訓練場で雑談をしながらしばらく過ごし、やがて配信の開始時間になった。まず白樺さん達が初めて、そこに俺たちが合流、最後に久遠だ。
「じゃあ今日もRising Leoの皆さんにファイトの指導をしてもらおうと思いま~す」
「こんばんは~」
「っす」
「やっほ~」
「もううちらは配信つけてるよ~」
「じゃあ俺らもつけますね」
他愛のないやり取りを交わしながら雰囲気を作っていく。すでに久遠のSNSでも発表されてるし、白樺さん達の配信タイトルにも専属コーチ発見! みたいなタイトルにしてるから、リスナーの人らも久遠の登場を待ってる感じだな。
「さて、配信のタイトルにもなってるから皆も知ってると思うけど、ついに私たちにも専属コーチがついてくれることになりました~」
「いえ~~い」
「H4Y4T0さん達にこれまで見てもらってたけど、3人はRising Leoとしての活動がメインだからどうしても付きっ切りでの指導が受けられないし、どうしよう~ってなってたんだよね」
「ねぇ~。知り合いの人たちもみんなプロリーグ予選に出るから頼める人いないし」
「み、みんな必死に探しましたもんね」
「それで困り果ててH4Y4T0さん達に相談したんですよね」
白樺さんから俺にパスが回る。久遠に関して余計な勘ぐりはどうしても出るだろうけど、少しでも抑えるために予め台本っていうか筋書きを考えておいた。
「うん、といってもなかなか俺も知り合いそんなに多くないしね。元チームメイトの久遠に話してみたらちょうどFAしようか考えてるってことだったんで」
「というわけで、お話してみたら受けていただけたので、私たちの専属コーチにはH4Y4T0さんの元チームメイトの久遠さんがついてくれることになりました~」
「いえ~~~い!」
「やった~」
「それじゃあコーチ~! 来てくださ~い」
「は~い、こんばんは~。久遠と言います。よろしくお願いします」
白樺さんの招きに応じて久遠が通話に入ってくる。結構緊張してるこれで全員が配信上で揃った。
「コーチめっちゃ緊張してるんだけど」
「ほんとだね。ほらコーチ、リラックスリラックス」
「気持ちが分かるから私も緊張してきた」
「なんで雫が緊張してんのよ」
ひよりも混ざって久遠の緊張をほぐそうとしてくれてる。配信では白樺さんたちは久遠のことをコーチと呼ぶことにしたみたいだ。口調は砕けてても、きちんとコーチと生徒という関係を印象づけたいって配慮してくれたらしい。
コメントを見る限りは特段変なのもいなそうだ。むしろSL再集結みたいなコメントがたくさん流れて来てて、思ってたよりもすんなり受け入れられてる感じがする。ひとまず滑り出しとしてはまずまずってところかな。
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