第2章31 進展
それから事態に進展があったのは2日後だった。久遠から連絡があり、弁護士から契約解除において久遠に不利になる条項は見当たらないと回答を貰ったということだった。久遠はすぐに契約の解除をKERBEROSの代表に持ち掛けることになった。
久遠から話が終わったら連絡するということだったので、それまでは各々個人で練習をすることにした。レートしても集中できそうになかったし。
昼過ぎになって久遠からチャットが届き、4人で通話を繋げる。
「お疲れ」
「久遠、お疲れ様」
「どうだったんだよ」
「うん、びっくりするくらいあっさり受け入れられたよ。代表からはそうか、次のステージでも活躍を期待しているだってさ」
「ふん」
「ぬけぬけと」
俺とSetoは不機嫌な様子を隠そうともせずに吐き捨てた。何が活躍を期待してるだ。てめぇで見限ったくせによく言いやがる。
「契約解除の書面を交わして終了だってさ。事務所にはほとんど私物も置いてないし、片付けもほとんど必要ないと思う。次の所属先について聞かれたけど、まだ決まってないって答えておいたよ」
「それで正解だよ。何もいうことない」
「あぁ。余計な詮索すんなってんだ」
「嫌な感じだね。ほんと」
「まぁ、これで晴れて僕もFAだ。解除まではKERBEROS所属だけど、別にこれから好きに動いていいって言われたしね。チームメンバーに挨拶だけしてさよならするよ」
最後の義理は果たすってところか。まぁ久遠がそうするって言うなら俺たちがどうこう言うことじゃない。チームの人たちを悪し様に言えるほど俺たちは実情を詳しく知らないし、久遠も悪く言わないんならその人達を責めるのはお門違いだろう。
「じゃあもういつでもこっちに合流できるんだよな?」
「うん、茜さんにも伝えたし、コーチングの件もあちらからも是非お話しさせてほしいって言ってもらえたみたいだよ」
「そうか、よかった」
「あたしにも連絡きたけど楽しみにしてたよ。付きっ切りでコーチングしてくれる人がホントに見つからなくて困ってたから早く話してみたいって」
「うん、精一杯やらせてもらうよ」
だいぶクリアになってきたな。あとは俺たちが久遠を白樺さん達に紹介してって感じか。あれ、そういえば。
「久遠、そういえば自分の配信用のチャンネルって作ったのか?」
「う~ん、KERBEROSで作ってたけど、ほとんど配信してなかったなぁ。他の2人のVCに声は乗ってたと思うけど」
「そういや俺たちとやってたときも作ってなかったよな? これからどうすんだ?」
「特にチャンネルとか作らずに通話でコーチングしようと思ってたけど」
まぁそれはそれでいいのか。別に絶対配信しないといけないってわけじゃないんだし。ただなぁ。
「ぶいあどのコーチになるんだったら注目も集まるし、収益化の基準もクリアできると思うけど? 少しでも自分で稼げるようにした方がよくないか?」
「そうなんだけど、ちょっと時間がほしいかな。配信するとコメントとかにも注意を配らないといけないし、一応SNSでFAになったこととかは告知するから、自分のとこにも教える子達のとこにも変なのが行っちゃうのが怖いかな」
「あ~、確かにタイミングはしっかり考えた方がいいか」
「久遠のメンタルが元に戻ってからでいいのかもな」
「まぁH4Y4T0達と知り合いって時点でお察しではあるんだけどね。ひとまずコーチングに集中したい」
「あたしは久遠の考えに賛成かな。ネガティブなときは嫌なコメント目につきがちだし」
「おぉ」
「経験者の言葉は重みが違うねぇ」
「茶化さないの」
ひとまず当面は久遠は通話のみで参加ということで纏まった。白樺さん達にひよりから連絡し、今日配信前に話をすることになったのだった。
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