第2章10 休憩

「そ、そうだよ。レートの真っ最中なんだし! 次どう動くの?」

「あ、あぁじゃあこのままピン刺したルート行こう」


 珍しくひよりがSetoに従ってる。そんなに恥ずかしいもんかね。まぁ知り合いに聞かれるのは恥ずかしいのか。褒めて機嫌を取るってのとはちょっと違うけど、ひよりももう気にしてないっていうか頭から飛んでったみたいだからよしとしよう。


 その後はさすがに実力差が開けすぎているから危なげなくTriumphを取ってロビーに戻ってきた。そこからしばらくレートに潜り続ける。


相変わらずゴースティングが来たけど、そーいう連中の襲撃を事前に察知するためのロビンフッドでもある。極力安全なムーブを心がけて立ち回ることで全戦全勝とはいかなかったけどほとんで上位で終えることができ、3時間で全員のレートはダイヤに到達していた。


「やっぱチーム組んでやると盛れるねぇ。こんな爆速で上がるんだぁ」

「そりゃ連携取れるしね。でもキルポも結構万遍なく取れてるし、そこまで開きないでしょ?」


 ロビンフッドで索敵してる分俺がちょっと2人より少ないけど誤差の範囲だ。ひよりがSetoにほとんど遅れを取らずにキルポを稼げているのが成長を物語っている。


これを見てキャリーだなんだって言う奴らは目が曇ってるとしか言えないな。


「一旦休憩するか? ぶっ続けだったし」

「そうだね。一旦休憩ってことで。ご飯でも食うかなぁ」

「あ、じゃああたしもた~べよ」


 3人揃って休憩タイム。それぞれ夕食を取ることにして、俺はいつもの通り手早く夕食を作り始める。


 ズルズル~。


「今日は何食ってんの?」

「近くのスーパーで安売りしてた家系ラーメン」

「またカップ麺食べてるんだ…」

「いやこれかなり美味いよ? どこかは知らないけど有名店が監修してるらしくて最近ハマってる」 

「いやそうじゃなくて、野菜とかは?」

「え、具に入ってるし」

「ボケだよね? 本気で言ってないよね?」

「……」


 何やらひよりの雰囲気が怖い。笑顔の後ろにゴゴゴって効果音が出ているような気がする。


「だってサラダとか別に食べなくてよくね?」

「少しは食べなさいよ! 栄養偏るでしょ?」

「たまには食べるから」

「最後にしっかり野菜食べたのいつよ」

「……」

「ほらぁ! やっぱり覚えてないくらい前じゃん! そんなことしてるとホントに体調崩しちゃうよ? せめて野菜ジュースとか飲まないと」

「いやだよ不味いし」

「~~~!!」

「こいつ結構好き嫌い多いから野菜ジュースとか絶対無理無理」

「一応聞くけど苦手な野菜は?」

「とりあえずトマトは無理。加工してればいいけど生のあのグジュグジュしたのが気持ち悪すぎる。あとピーマンとか苦いものはノーサンキューだな」

「何がノーサンキューよ! つべこべ言わずに食べなさいよ」


 そんなおかんみたいなことを言われても。苦手なものは苦手なんだからしょうがない。ケチャップとかトマトソースなら平気なんだけど生は絶対無理だな。


「なら宅配サービス頼めばいいじゃん! あたしはそれでサラダとか頼んでるし」

「高いからやだ」

「ならスーパーで買えぇ! 駄々っ子か! これだから生活力ブロンズは」

「おい、ひよりだって買ってるだけじゃん」

「別に自分でも作れるわよ! 毎回買ってるわけじゃないし」


 へぇ、料理できるのか。すごいな。全然出来ないからキッチン用具も碌に揃えてない。Setoも全く出来ないって言ってたけどあいつはあの子がいるからなぁ。


「コメントの連中が作ってもらえだってよ」

「厄介リスナーどもがぁ!」

「この人らくっつけたいのかくっつけたくないのかどっちなんだよ」

「とにかく、野菜ジュースも飲まないならせめてサラダを買って食べなさい! 別にトマト食べなくていいから。大会までに体調壊したら最悪でしょ」

「…分かったよ」


 大会を引き合いに出されたら納得せざるを得ない。なんか上手いこと言いくるめられてるみたいで若干癪だけど。


「これからご飯のたびにちゃんと買ったか聞くからね」

「監視しなくても」

「尻に敷かれてんなぁH4Y4T0」

「お前が言うなお前が」


 

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