第1章63 際ムーブ

  第1収縮の円が表示されたことを確認し、俺たちは移動を開始する。今度は安地が北西に寄った。今度は前回みたいにひたすらマラソンする必要はない。


 制限が解除されたことでSetoにはゴクウを採用させた。これで移動は問題ない。


 俺はこの大会の環境的にセイメイのメタになるし索敵もできるからロビンフッドを引き続き使っている。


「OD溜まったら飛ぶよ」

「おけーい」


 走りながらも点在するボックスを開けて物資を補給していく。


 今回は安地中央を死に物狂いで狙うことはない。収縮毎に強ポジを抑えて、ファイトで着実にポイントを上げていく。


 今度はキルポを上限まで取ることが至上命題だ。ファイトも積極的に仕掛ける。


「溜まった」

「よし、あの崖沿いで使う」


 3人で素早く遮蔽の多い位置に移動してゴクウのODを発動。空高く打ち上げられてから筋斗雲に掴まって再度の空挺降下だ。


 俺が狙ったのは崖に挟まれた隘路の出口付近。射線を切りやすいし、安地に追い立てられた敵がここを通るときは通るルートが限定出来るから有利を取りやすい。


 今回の安地がちょうどこのあたりが際になる。


 飛行中もまだ取られてないことを確認し、無事に目当てのポジションを確保できた。


 今回は先入りじゃなくてきわムーブ。ファイト力に自信があるからこそ取れるムーブでもある。収縮毎に戦闘が起こりやすいからね。


「スキル使うから警戒よろしく」

「あいよ」

「了解」


 俺は物陰に身を隠して”霊鳥の目”を起動。空中にシルフィを配置して眼下を確認した。


 ゴクウで敵影が近くにないことは確認済みだけど、次に起動するときにすぐに空中で使えるように崖から生える茂みに隠して一旦解除。


「今んとこは敵はいない。第1収縮で多分ここ通るとこあるから、そこを倒すよ」


 俺の予想だと2チームくらいここ通りそうな気がするんだよね。やがて第1収縮が始まり、マップの半分ほどが吞まれていく。隘路の入り口はギリギリ安地内だ。


 しばらく待っていると隘路の先で銃撃が始まった。予想通り2チームがここを通ろうとして鉢合わせしたみたいだな。グレの音も聞こえてくる。


「HAYATO、これは」

「もちろん漁夫る。タイミングは指示するから待ってね」


 どちらも引くことはないようで、互いにセイメイのODを切ったみたいだ。これで俺たちが襲い掛かっても返す手札が減ったな。


 キルログに目をやり、一方が2人、もう一方に1人ノックダウンが入ったタイミング。ここだな。


「いくよ。2人残ってる方から潰す」


 隘路をダッシュで突っ切る。見えたのは、今まさにカーミラにとどめを刺すべく詰めようとしていたセイメイとマーリン。


「セイメイから!」


 俺のフォーカスコールに2人も即座に応える。結界残ってたら怠いから守りの要から倒す。


 集中砲火を浴びて成す術なくセイメイはダウンする。マーリンはスキルの”キャスリング”を使ってぶん投げたグレと自身の体を入れ替えて逃亡を図る。


 マーリンがさっきまでいた場所には投擲されたグレネード。一旦俺たちはその場を離れて爆風から逃れる。


 モロに爆発を食らったのはダウン中のセイメイだけだ。あ、確殺入った。


「投げたの見えてんだから逃がすかよ」


 Setoが空中を舞うマーリンに追撃し、体力が削り取られたマーリンの姿がボンっという撃破音とともにボックスへと変わった。


 これで片方は全滅。Setoがマーリンを狙う間に俺とひよりで1人残ったカーミラを倒して戦闘は終了した。漁夫の漁夫を警戒したけど詰めてくる部隊はなし。


「よし、ナイス」

「ナイスコール」

「完璧だったね」


 お互いを労いながらボックス内のアイテムを回収していく。弾も回復アイテムも潤沢になった。


「籠ってチクチクも悪かねぇけど、やっぱ俺はこーいうキルムーブが性に合うわ」

「Setoくらいフィジカルあればそうだろね~」

「HAYATOもだろ?」

「だね。先入りムーブって入っちゃえば後はおみくじだから」

「あ~確かに。IGLとしてはこっちの方が楽しいのかぁ」


 物資を漁り終えた俺たちは再び元のポジションに取って返す。次はどこを狙うか。どの位置にどの部隊がいるか。


 頭が唸りを上げているような感覚を覚えながら、俺は次のムーブを考え始めた。


 第1収縮終了時点、生存15部隊。

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