第1章64 メタ

 第2収縮は第1収縮からさらに北東に寄った場所が円で表示された。俺たちは一番遠目に位置している。ちょっと渋いな。


 ゴクウを採用してるからある程度すっ飛ばすことが出来るとして、採用してるチームも多いから恐らくこのまま真っ直ぐ安地を目指すと混戦になる。


 さすがにそうなると展開が読めない。戦闘を積極的にするとしても、それはある程度の有利を持った状態でっていう条件がつく。


 闇雲に出会った敵と戦う低レートやノンレートでの戦闘とは違うんだ。


「ちょっと大回りになるけど北側から回り込むよ。直進すると足の引っ張り合いになる」

「はい!」

「あいよ。ODいつでもいける」


2人は俺のオーダーに即答してくれた。


「すぐ飛ぶよ。Seto頼む」


 ゴクウのODを再度発動。一旦真北の方向にピンを刺した。俺たちが直進した場合進むエリアを見やると、2部隊が視認できる。


 その先にもランドマークが近いであろう部隊がいると考えれば、やはり避けて正解だったと改めて思えた。


 着地してからもしばらく移動を続け、視界の悪い森を抜けると木造住居が立ち並ぶエリアに出る。


 ここは元々”最下位取ったら即終了”のランドマークだっけ。今んとこ最下位とってないっぽいからまだ配信やれてるんだろう。


 名前はふざけてるけどここも元競技のプレイヤーがリーダーだし、カスタムでも何度かTriumph取ってたしな。


 歯茎むき出しのネタっぽい名前だけどちゃんと強いチームだった。


 すでにもぬけの殻になった住居地帯を抜け、ここで北上は終了だ。


「よし、ここから安地目指すよ。多分さっき通ったとこを拠点にしてたチームと当たる」

「うん、ほんとよくそこまで読めるよねぇ」

「な、見てからどこってんなら分かるけど、事前に言い当てるからキモいんだよな」

「素直にすげぇで終わらせとけよマジで」


 でもそこまで難しいことじゃない。収縮から元々近い場所にいたんだからまだ近くにいるでしょって予想がベースだし。


 あとはカスタム期間中のムーブを見とけばどんな風に考えるIGLなのかも少しは分かるしね。


「あとは初動で反対側のランドマークに降りたとこだけど、1チームは落ちてるからあり得るとすればもう1チームってとこじゃないかな」

「さっきあたしたちが避けた方から北上する可能性は?」

「うん、それも考慮に入れなきゃだから、安地収縮と一緒に移動する。遮蔽は岩とかも多いから困らないしね」

「了解」


 やがて第2収縮が始まり、俺たちは迫り来るダメージエリアの境界を背に駆ける。今回の収縮では接敵することはなかった。


 安地はさらに北東に寄る。俺の予想もおんなじだ。俺はスキルを起動して上空から状況を探る。


「やっぱいた。次の安地の境界に”最下位~”がいる。あとは…いないな。回り込んで正解だった」

「てことはそことやるんだな?」

「うん、ここは倒すよ」


 あそこの編成はセイメイ・マーリン・ロチシン。セイメイとマーリンが壁を張れるからとにかく耐久力に特化してるな。


 けど、それは俺らにとっては相性がいいってことでもある。


 漁夫になり得そうな敵がいないことも確認できた。心置きなくしかけよう。


「ひより、初手でOD使って」

「えっ、いいの?」

「うん。吹っ飛ばすからグレよろしく」

「あぁ、なるほどね」


 すぐに俺の意図を察したひよりが元気よく応じる。Setoも準備万端。


 俺たちに気づいた相手が撃ってくるけど、俺たちは配置された岩を上手く使いながら接近。


 Setoがスティッキーを投げて牽制すると、まずロチシンがスキルの”土隆壁”で爆風を防いだ。相手の視線が切れた隙に一気に接近し、ひよりがODを発動する。


 ロチシンのスキルは壁を生むがけど上空から降り注ぐ爆撃は防げない。当然セイメイの結界を発動するわけだけど、それが俺の狙いだ。


 今度は俺がロビンフッドのODを起動して結界と壁を諸共に消し飛ばした。さらにバリアにもダメージが入り、そこに絨毯爆撃が降り注ぐ。立て続けにバリアが剥がれる音が聞こえてきた。ダメージトレードでは完全に優勢だ。


 追撃で…さっき言ったから今更か。


「いいとこ投げれた。多分結構入るよ」


 ひよりの確信めいた言葉から1.5秒ほどで、爆撃を耐えた3人の頭上からグレネードが追撃。


 落下とほぼ同時の爆発で避ける間もなく、モロに爆発を食らったマーリンがダウンした。


「Go!!」

「詰めろぉ!」


 残るロチシンとマーリンも危なげなく詰め切った。これでキルポ6。


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