第1章55 第1ゲーム決着

「ふたりとも、こいつら射線きつそうだからキル狙えるかも」

「おけ~い」

「狙うね!」


 俺は”霊鳥の目シルフィ・アイ”によって得た情報を2人にどんどん伝えて窓からキルを狙わせていた。


 安地は第2収縮が終わり第3収縮を目前に控えたところだ。普通なら部隊が半分くらいになってておかしくないのに、現在残っているのは16部隊。多すぎる。


 先入りでの生存ムーブをどの部隊も採用した結果、戦闘がほとんど起きないまま膠着状態が続いていた。


 ただ、次の収縮が始まればコップに並々に溜まった水が表面張力でも耐えきれず溢れ出すように均衡は崩れ去る。


 さすがに次の安地面積に今の部隊数を収めるのは到底無理だ。今も次の移動を考えての小競り合いが至るところで始まってる。


 この戦闘に横槍を入れてノックダウンが取れれば儲けもので、俺たちはチクチクと嫌がらせを仕掛け続けるのみだ。


「あっ、ノック取れた!」

「ナイス、確キルは狙えたらでいいから。あとこっちも狙えるからね」

「うん。あ、部隊壊滅したからポイント入った」

「ごちで~す」


 Setoは言ってるそばからODで今しがたボックスになった敵のアイテムを物色してる。


 ここまでで俺らの物資は潤沢だ。武器は最初の戦闘でアタッチメントも含めて揃ったし、回復アイテムも問題なし。


 あとは今より性能がいいものがあれば程度だ。弾に至っては撃ち尽くせないくらい床に散らばってる。


 いよいよ収縮が始まり、弾かれるようにいくつかの部隊が動き出す。

 

 建物の壁面に張り付いたりそれぞれがなんとか安地内に入り込もうとするけど、込み入った安地内からはそれを許すまいと容赦なく弾丸が放たれる。


 瞬く間にいくつかの部隊が姿を消し、収縮が終わるころには残ったのは9部隊へと減少した。


「さて、お祈りのお時間です」

「あぁ神よ、これまでの行いを深く懺悔いたします。どうか次の安地にも入っていますように」

「お願いします。あとでちゃんと謝りますからぁ」


 ちょけてる奴と割とガチで謝ってる奴がいるな。アルセーヌを実装してんだから許すもへったくれもないだろうに。


 ともあれ天に祈りは通じたらしい。収縮が終わると同時に次の安地が表示される。円のちょうど中心に、俺たちの籠る建物が表示された。


「はい愛された。上位確定」

「おぉ、神は許されたもうた! あなた様の慈愛に感謝を…てわけで引き続きぶっこ抜きまぁす」

「エセ神父にも程がない?」

「引き続き励みなさいとの神様の思し召しです」


 俺が周囲を警戒してる間にコント始めてんじゃねぇよ! 


 まぁ盗むかチクチク撃つしかしてないけど。今度も次の安地に外れたとこは移動せざるを得ない。同じことの繰り返しだ。


 こうして建物内に立て籠ったまま2度の収縮をやり過ごした。最終収縮まで生存したのは3部隊。


 安地の中心は俺らの籠る建物から若干ズレたポイントになったけど、一番安全かつ有利なのは揺るぎない。


「2人とも、最後の最後まで建物から出るなよ。ギリのギリまで中にいる」

「はいよ」

「分かった」


 やがて、警戒音とともに最後の収縮が始まる。


 ジワリジワリと非常にゆっくりと、だが着実に安全圏が狭まっていく。


 安地外で受けるダメージは、最初のうちはほんの僅かでしかないけど、最終ともなると4秒で体力が全損するほどになる。


 建物の外の2部隊は割り切ったみたいだな。2位を狙って戦闘を始めた。それなら俺らも介入しよう。


「ひより、一瞬外に出てOD」

「はい」


 弾かれるようにひよりが外に出てセイメイのODを発動する。


 外のチームも片方発動してたみたいで、”式神瀑符”による絨毯爆撃が狭い安地内に降り注いだ。結界を張ってなんとか耐えようとするけど、


「はい、だめで~す」


俺もロビンフッドのODを発動。”霊鳥爆散”による衝撃波はセイメイの結界を吹き飛ばす。


 頼みの結界も無くなり、爆撃を耐える術はない。1部隊が全滅し、残った方も1人ノックダウン状態だ。


 俺とSetoも拠点を飛び出して残った2人に襲い掛かる。


 Setoの放ったショットガンがスローモーションで再生され、最後に生き残ったマーリンの額をぶち抜いた。


 ”Triumph”


「しゃあぁあ!」

「ナイスゥ!」

「やったぁあぁあぁ!」


 最っ高の滑り出しだ。


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