第1章56 安堵

「さぁ第1ゲームは最終局面です。ここまで残ったのは泥C率いる”Crescentクレセント”、パンデモニウムストリーマーNero率いる”暴君Nero”、そしてH4Y4T0率いる”おひるね日和”の3部隊となりました」


「先入りしていた”Crescent”と”おひるね日和”とは対照的に、”暴君Nero”は遅れましたけどうまく戦闘を搔い潜ってここまで残りましたね」


「はい、レインさんはこの後の展開をどう見られますか?」

「そうですね。これは”おひるね日和”が圧倒的に有利です。拠点にした建物に掛かるか掛からないかの地点が最終安地の中心なんで籠ってればいいですからねぇ。他の2チームもそれは分かってるので、1位を狙うってよりは何とか2位を確保するって展開になると思います」


「ありがとうございます。あっ、ちょうど最後の収縮が始まりました。やはり動き出すのは”Crescent”と”暴君Nero”! 交戦が始まります。投げ物の応酬から、Neroが仕掛ける!」


「柊美月さんがセイメイの結界で上手く防ぎました。3人でフォーカスしてNeroさんを落としました」

「さすがはRagnarokの指揮官泥C! まずは数的有利を作りだしました。さらに柊美月がODを発動!」


「あっ、”おひるね日和”も加わりましたね。楠さんもOD撃ちました」

「柊は先ほど結界を使ったばかりなので爆撃を防ぐ手段がありません。逆に”暴君Nero”の方はセイメイ使いの小鳥遊たかなし あおいが結界を張ります」


「これは形勢逆転したかもしれません。さすがに”式神瀑符”を結界なしで耐えるのは…あぁ、それすらもさせないと」

「無慈悲! 完璧なタイミングでH4Y4T0がロビンフッドのODを発動して結界が吹き飛ばされました。容赦なく降り注ぐ爆撃の雨。”暴君Nero”壊滅です!」

「”Crescent”も柊さんがダウンしちゃいましたねぇ」


「そしてここで、満を持してSetoとH4Y4T0が姿を現しました」

「決まりましたねぇ。お見事」


「この1試合にどれだけの驚きを詰め込んだというのかぁ! 神速の初動、アルセーヌとロビンフッドの凶悪コンボ、そして中盤以降は盤石の安定感を見せつけ、H4Y4T0率いる”おひるね日和”が第1ゲームを制しました!!」



「いやぁ~、レインさん。度肝を抜かれるとはこのことを言うんでしょうね」

「あ~、全く同じこと言おうと思ってました。意外性と安定感をここまで両立させるってほんとすごいですよね」


「はい、最後のODもここぞってタイミングでしたよねぇ」

「そうですねぇ。今大会ではほぼ全てのチームがセイメイをピックしているわけですが、強力なメタであることを改めて示しましたよね。ここ以外にも2チームほど採用してましたし、もう少しカスタムの期間が伸びてればもっと採用が増えてたかもしれないなって思います」




「2人ともガチでナイス!」

「完璧なスタートだなぁおい!」

「よかったよぉぉぉ…」


待機所に戻ってからも俺たちの興奮は冷めやらない。ひよりは初戦からTriumphが取れて安堵したのか早くも若干涙声になってる。


「ははっ、ひより、泣くのはまだ早いよ。まだ最初が終わっただけなんだから」

「まぁいいんじゃん? ほっとしたんだろ?」

「うん…少なくとも1戦は結果出せてよかったぁって」

「そういやひよりは何キルだ?」


 試合結果画面を表示すると、順位と各参加者のキル数と与ダメージが確認できる。

 

 一列目の一番左にある俺たちの項目に目をやる。俺とSetoのポイントは0扱いだから無視。ていうか俺0キルだったわ。まぁ走るか鳥になるかしかしてないからな。


 ひよりのキル数は…5。


「ひより5キルじゃん!」

「マジかよ!」

「うえぇえぇぇぇ!? 3キルだったよ?」


「多分最後のODで2人ノック入れたんだろうな。確殺はアシスト扱いだから」

「あぁ、もう1人撃ってたからどっちのか分かんなくなってた」

「ほぼ上限じゃねぇか! ガチでかしたぁ!」


 Setoも手放しに賞賛してる。実際素晴らしい成果だ。零したポイントは僅か1。


 もちろん欲を言えばフルで欲しいけど、十分と言っていいだろう。


 序盤の戦闘でもグレの跳ね返りまでしっかり計算に入れた完璧な投擲で1人ダウンを取ったわけだし。


 建物内での戦闘も、ダメージトレードで圧倒的に有利だったとはいえ3秒掛けずに仕留めてた。これまでの努力の成果が初戦からいかんなく発揮されてる。


「あっ、スタッフさんから勝利者インタビューがあるから3人とも通話の方に移動してくれってさ」

「あいよ~」

「は~い」

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