第1章48 第3回 Ragnarok Cup 開始

 ひよりがいつもの通話部屋に入ってくる。同時にTBのホーム画面にも招待を受けて入ってくる。


「よ! お疲れ」

「お疲れ様」

「クリップ見た?」

「うん、ほんとにありがとう」

「無敵な気分になるだろ?」

「うん、まさにそんな感じ。めっちゃテンション上がった」


 興奮した様子で感想を伝えてくるひより。どうやらお気に召したみたいで何よりだ。


「あれをエイム調整終わった後と、初戦の始まる直前に見るのが俺たちのルーティンなんだよ」

「へぇ~、そうなんだ。でも分かるかも。強くなる気がする」

「いやガチで大事だぞ。それに自分のクリップだからより強烈に効くんだよ。過去の自分が出来たことを、今の俺が出来ないわけがねぇ。今の俺はもっと強ぇってな」

「うんうん、それ思った! ばっちり暗示かかってるよ」

「よし、ならOK。あとは最終的な調整しながら公式の配信を待とう」


 やることはいつもと変わらない。タイマンして、ノンレートを数試合だけ回して、あとはリラックスするために雑談。この1ヶ月でこのサイクルがすっかり当たり前になった。

 ひよりも緊張はしてるだろうけどナーバスになってる感じはない。やがて公式の配信開始時間が近づいてきた。すでに3人とも配信を開始して運営指定のコードを入力して待機は完了している。他のチームも遅れることなく待機完了。


「いよいよだね」

「うん、すっごいドキドキしてる」

「いいよなぁ、この始まる前の緊張感。あ~、早くやりてぇ!」


 俺たちだけじゃない。コメントでも開始が待ちきれないリスナーたちが大会の始まりを今か今かと待ち受けていた。


 そして18時。公式の画面が切り替わり、カウントダウンが始まる。


 5・4・3・2・1・0。


 サムネイル画像が暗転し、オープニング映像が流れ始めた。


 1台のPCが映し出され、モニターへとズームしていく。モニターに映る”Ready”にカーソルが合わさり、クリックと同時に”Start”へと切り替わる。

 全20チームと参加者の画像が次々に映し出された。俺たちはラストだ。そこから画像がプレイ映像へと転換し、過去2大会のハイライト映像が流しだされた。


『やったやったやった!』

『詰めろぉ!!』

『OD切って!』

『ダウン!』

『前前前前ぇ!』

『今の勝つのマぁ?』

『だっはっはっは!』

『しゃあぁぁぁあ!』

『ナイスゥウゥ!』

『ナ~イス』

『ナイス!!』

『GGイィ!!』

『しゃあぁぁぁあ!』

『やったぁあぁあ!』


 緊迫した戦闘シーンからTriumphが決まる歓喜の瞬間が続けざまに移され、当時の興奮がダイレクトに伝わってくる。


 その後、第1・2回の優勝チームが写され、第3回目→”Who?”。

 全20チームの画像が今度は目にも止まらない速さで表示され、ドンという重低音とともに大会ロゴとメインイラストが表示された。


「第3回 Ragnarok Cup ver Triumph Bullet ”本気ガチ”」


 いいねぇ。カジュアル大会とは思えないくらい気合の入ったオープニングだった。


 観戦する側だけじゃない、参加する側の人間が見ても血が滾る。盛り上がらないわけがないな。


 次第に画面が暗くなり、3Dステージが映し出された。


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