第1章33 情報解禁

 今日はいよいよRagnarok Cupの情報解禁日だ。すでにSNSでは多くのストリーマーが参戦を発表していて大盛り上がり。トレンド上位を軒並みRagnarok Cup関連のワードが占めていた。


 俺たちは公式配信での発表になるので、まだなんの情報も発信していない。練習を早めに切り上げてRagnarokの運営からの連絡がいつでもとれる状態にしたうえで、配信の開始を待っていた。


 第3回Ragnarok Cupとロゴが書かれたサムネイル画像に、開始時刻の19時を過ぎたところで秒刻みのカウントダウンが表示される。


 3・2・1・0。


 一瞬の暗転ののちに画面が切り替わりスタジオが映し出される。そこにはよく見る顔ぶれが楽しそうな表情を浮かべて座っていた。


「みなさん、こんばんは。第3回Ragnarok Cup ver Triumph Bulletの情報解禁番組をご視聴いただき、誠にありがとうございます。進行を務めますのは私、フリーe-Sportsアナウンサーの波石 卓也と」


「は~い、みなさんこんばんは~。プロゲーミングチームRagnarokのオーナーの弥勒です。たくさんお集まりいただいてありがとうございま~す」

「こんばんは。当日解説を務めます、レインと申します。どうぞよろしくお願いします」


 波石さんもレインさんはこーいう大会の司会や解説でお馴染みだ。俺たちが優勝した大会もこの2人が喋ってたし。


 レインさんはTBリリース初年度のアジア大会で優勝を果たすなど実績も抜群で、今でこそ競技シーンを離れてはいるものの、コーチや解説として活躍している。


「お二人とも、ありがとうございます。弥勒さんがおっしゃる通り、すごい人数ですねぇ。始まったばかりなのにもう同接10万人超えてますよ。なんだか回を追うごとに注目度が上がっていってますねぇ」


「いやほんと、ありがたいことです。こうして見てくれる人、そして今回参加してくれる皆さんのお陰で、大会も3回目を数えることができましたし、e-Sports界隈が盛り上がるので」


「レインさんも、前回から続けての参加になるわけですが、盛り上がりという点ではどう感じられてますか?」

「そうですねぇ。やっぱり世界大会が開かれてからプレイ人口もまたグッと増えてますよね。カジュアル大会もたくさん開かれてますし、今一番ノッてるタイトルと言っていいんじゃないかなと思いますね」


 スタジオの3人が軽快にやり取りを交わし、協賛企業などの紹介に移った。すごいな。ざっと見ただけで20社くらい参加してる。

 

 やっぱ大手のチームが主催の大会となるとこんなにスポンサーがつくのか。デバイス関連の企業はもちろんのこと、お菓子や玩具メーカー、大手の広告代理店も名を連ねている。


「さて、今回もたくさんの企業様から協賛をいただいております。ありがとうございます」

「本当にありがとうございます。お陰で商品もすごく豪華になって」

「すごいですよねほんと。優勝賞金300万円もすごいんですけど、副賞がえぐいっていうか」


 いやガチですごいな。優勝すれば最新のゲーミングデバイスセットが全員分もらえるし、豪華旅行券までついてくるみたいだ。


 最下位までちゃんと何かしらもらえるようになっていて、19位もブービー賞として1位と同じデバイスセットが。カジュアル大会ならではって感じだな。


 その後はルール説明。マッチは全5試合、マップは世界大会でも使用された”王家の谷”と”高天原”。


 順位ポイントは全試合共通だけど、キルポイントには制限が設けられている。上限となるポイントが3→6→9と段階的に増え、第4・5試合目は無制限。なぜこういう制限を設けるかといえば、大会を最後まで盛り上げるためだ。


 もし序盤で爆発するチームが出てくると、残りの試合が結果の見えた消化試合になってしまう可能性がある。キルポイントに上限を加えることで、序盤に突き抜けるチームを抑えて、混戦のまま最終戦を迎えることが出来るようにしているわけだ。


 あと、このシステムにすることによって、戦略的にも面白いことがある。キルポイントに上限があるということは、戦闘のリスクリターンが合わなくなるんだよね。


 キルポがあるから積極的にファイトを仕掛けるけど、ポイントを得られないのに戦闘しても旨味が少ない。だから、特に序盤の2試合は生き残ることに重きを置いた立ち回り、キャラピックがなされるはずだ。


「さぁ、ルールの説明も終わったところで、いよいよ、今回の参加者の皆さんをご紹介していきましょう。すでに、SNSで発表されております通り、今回も超豪華な面々となっております」

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