第1章28 謝罪と相談
どうやら俺は知らぬ間にド級のプレミをかましてしまったらしい。そりゃひよりもあんな反応するわ。答えにくいわな。
とりあえずひよりには謝罪と本当に知らなかったことを書いてメッセージを送っておいた。ひよりもすぐに気づいて大丈夫と返事をくれてほっと胸を撫でおろす。
蚊帳の外にいたSetoに事の顛末を話すとそりゃあ大笑いされた。
「あっははははは。なんだそれ、俺も初めて聞いたわ。てぇてぇって言うんだ。やっぱ知らないジャンルと絡むと面白れぇなぁ」
「笑いごとじゃないっての。一応ひよりも許してくれてたけど明日の配信憂鬱だわぁ」
「てかさ、そういうのってなんとなく燃えるイメージだったんだけどそうじゃないのな」
「それな。俺めちゃめちゃビビってるわ。V界隈ってガチ恋勢やばいらしいじゃん?」
TBに関することで叩かれることに関してはよくあることだから気にしない。ファンになってくれる人がいるように、どうあっても合わなくて嫌いって感じる人がいるであろうことは割り切っている。
どちらかといえばSetoのほうがその手の連中は多いしね。まぁあいつもそういうの気にしてるとこなんて見たことないから大丈夫なんだろ。
俺らもいわゆる人気商売。個性がないよりは何かしら尖ったところがあったほうがよかったりもする。やりすぎはだめだけどね。
とはいえ、この件に関しては完全に想定外だ。てぇてぇって言葉自体は悪い意味で使われてはなさそうだけど、気に入らない人も当然いるだろうし。
今のところはエゴサしてみても炎上してる気配はないけど、とにかく気を付けないと…。俺はともかくひよりに迷惑がかかるのは申し訳が立たない。
でも別に何か匂わせたり色目を使ったりはしてないと思うんだけどなぁ。てぇてぇってのは知らなかったけど、弥勒さんからもガチ恋には気を付けてねって聞かされてたし。
確かぶいあどって所属してる人たちをアイドル売りはしてないとも言ってたと思うし。
「てかそもそも会ったこともねぇってのにどうしてこんなことになるんだ…」
「くっつけたがるくせに燃えやすいってとんだ地雷原だな」
「ひよりんとこに変なのが湧いてないとないといいんだけどなぁ。こればっかりは俺には分からんし」
「聞いてみりゃいいじゃん。大丈夫か~って」
「それもそうだな。場合によっては明日以降の配信は一旦ストップしたほうがいいかもしれないし」
「まぁ配信つけないときにやるでもいいし、やりようはいくらでもあんだろ」
「おけ、じゃあひよりに聞いてくる」
「う~い」
Setoとの通話を切り、ひよりにさっきのことで少し話したいとメッセを送る。まだPCを触っていたのだろう。すぐに通話アイコンが表示された。
「もしもし、かけてくれてありがと」
「ううん、あたしも急に抜けちゃってごめんね」
「いやいや、ひよりが謝ることじゃないよ。知らなかったとはいえ本当に申し訳ない。ひよりのとこに変なの湧いてないか心配になってさ」
「あぁ、大丈夫だと思うよ? そりゃゼロってわけじゃないけど、普段から比べてそこまで増えてる感じもないし」
「よかった…。やらかした俺はまだしもひよりに迷惑かかったらと思うと怖かったから。まだ安心できないかもだけど」
ひとまずひよりのほうも大事にはなってないみたいだ。最悪の事態にはなってないようでほっと胸を撫でおろす。
「ひよりの方にもあぁいうコメントって多いの?」
「あはは、ぶっちゃけ最近は増えてきてるね。こないだ泣いちゃったときからかなぁ。そう考えるとあたしのせいかも」
あ~、あのときかぁ。でも特別変なやり取りはしてないと思うんだけどなぁ。確かにこっちも熱くなりはしたけど、それはあくまでモチベ的な意味合いだし。それ以外にとり取りようもなかったくないか?
とはいえ、今燃えてないからこれからも大丈夫って考えるのは楽天的すぎる。
「とりあえず今のところ大丈夫なのはよかった。ただ、これから事態が悪化するかもしれないし、これからの配信とかどうする?」
「う~ん、別に気にしないでいいと思うけど」
「そう? ならいいんだけどさ。あれだったら配信してのコーチングは控えたりした方がいいかなとか考えてた」
「いやそこまでしなくていいよ。むしろそっちの方が変な勘ぐりされそう」
「あ~、それもそうか。じゃあ一旦これまでどおりってことで」
「うん」
「ありがとう。改めて今日はごめんな。じゃあまた明日」
「は~い」
とりあえず明日以降も今まで通りということになった。ただいつ事態が急変するか分からないし、しばらく発言には気を付けよう。
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