第1章20 親睦会
今日は急なメンテナンスでTBが20時から使えなくなってしまった。それまでのコーチングで終わるかと思っていたら、
「親睦を深めましょう!」
楠さんからの突然の提案だった。
「んぁ?」
「どうしたんすか、楠さん?」
「コーチング始めてもらって、だいぶ雰囲気的には打ち解けましたけど、もっと仲良くなりたいな~と思って。まだH4Y4TOさんもなかなか敬語取れないし、オーダーとかする上でももっと雑にやり取りできた方がいいんじゃないかと思って」
「俺は?」
「Setoさんはすでに雑いでしょ」
「それはそう」
顔合わせから数日。かなり雰囲気としては打ち解けてきたと思うけど、たしかに俺も楠さんも敬語が取れない。
Setoは初日のプロレスでかなり砕けた感じになってるけど、俺は生来的な気質としてすぐにタメ語にはなれないんだよなぁ。
人見知りはそんなにしないけど、距離を詰める速さでいえばSetoに軍配が上がるのかもしれない。
「いいアイデアだと思いますけど、どうするんですか?」
「別のゲームをやりましょう。あたし面白いの教えるんで」
30分後、楠さんが教えてくれたタイトルを購入してダウンロードを済ませた。軽く説明を見た感じ、協力して料理を作るゲームらしい。
始めのうちは簡単だけど、ステージが進むにつれて料理の工程や材料が増えたり、キッチンにも色々なギミックが足されて難易度が上がっていくようだ。
準備が整ったところでそれぞれ配信をスタートさせる。
「「こんばんは~」」
「ういっす~」
「今日もコーチングしてもらおうと思ってたんですけど、急なメンテでTBができなくなっちゃったんで、別のゲームをやって親睦を深めることになりました~」
「よいしょお~」
「もうちょっとやる気出してもらっていいですか?」
軽いやり取りの後、楠さんがこれからやるゲームの軽い解説をしてくれた。コメントを見る感じ、リスナーのなかでも結構知ってる人が多くいるみたいだ。
「こういうゲームあんまやったことないけど結構簡単なんですかね?」
「まぁいつもどおりやりゃいんじゃね?」
「みんな、こんなこといってるよ」
楠さんは以前1回このゲームを別のコラボ配信でやったことがあるらしい。実際にやってみてからのお楽しみと言ってあまりそのときの内容については教えてくれなかったけど、今の発言を見る限りそれなりに難しいのか?
「まぁ、とにかくやってみましょう。それぞれキャラクター選んでっと」
このゲームでは可愛らしい動物のSDキャラを選んで操作する。俺がクマ、Setoがタヌキ、楠さんがウサギを選んだ。白い衣装にコック帽を被ったいかにも料理人って感じだ。
「それじゃあいってみましょう」
「「おぉ~」」
最初のステージではサラダを提供するらしい。キッチンの中には洗い場、まな板、コンロなどが設置されていて、材料を取れる場所もあるみたいだ。
チュートリアルということで、操作説明もなされており、俺たちはそれぞれ思い思いに野菜をまな板に乗せて切って盛り付け提供していった。
「なんだよ、めっちゃ簡単じゃん」
「そうだな。これなら全然いける」
俺もSetoもどんどんサラダを完成させてポイントを挙げていく。俺がきゅうりを切って、Setoがレタスを切り、楠さんが盛り付けて提供っていう流れが出来上がっていた。
「まぁ確かに覚えは早いかもだけど、このゲーム舐めたらだめですよ~」
楠さんはこの先を知っているからなのか、笑いを堪えているような感じだ。なんかイラっとくるけど、この後もどんどんクリアしてやるから見てろよと思いながらきゅうりを切り続け、最初のステージを無事にクリアしたのだった。
30分後。
「H4Y4TOぉ! 米まだかよ!」
「待てって! 今炊いてるとこだから」
「H4Y4TOさん、突っ立ってないで炊いてるうちに皿洗って!」
「えっ、あぁはいただいま!」
「おい炊けてんじゃん米ぇ! 早く持って来いって!」
「今皿洗ってんだろがぁあ! お前が取り行けよ!」
「こっちは魚切ってんだから」
「Setoさん、魚ばっか切って楽しないで!」
「あぁ? 魚の処理が一番大事でしょ~よ」
「切り身で床が溢れてんでしょ! 衛生面バグってんの!? あぁ、米焦げてる焦げてる! H4Y4TOさん、ちゃんと見ててよ!」
「だって皿洗えって言ったの楠さ...」
「つべこべいわず手を動かせぇ!!」
「すいませんでしたぁあぁ!」
どうしてこうなった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます